※ロニージョ←夢主前提

のっけからなんですが。

…失恋してしまってました。日本語が変だ

『───ぐあああああー…』

体勢は所謂体育座り…か、だがもはや体勢など気にもかけていられない。
膝に顔を埋めて、ただ独り。

しかし、そうして目を閉じれば、嫌な光景ばかりが目に浮かんでくる。

あの人が、他の人にあの優しさを、それも特別なものを。
向けているという光景を想像できて嫌でしょうがない。

だから目は開けたまま。

そうしてるせいで涙は留まる事を知らなかった。

「ああ、ここにいたな。」

…なんで奴の声が聞こえる。

見上げれば、見なれた金髪に碧眼。
悔しいほど綺麗な色の男、ニース・ドルフィン。

「サクラ」
『…なんだ貴様は』
「酷いな、折角慰めに来たのに」
『いらない、帰れよ』
「まぁ、そんな事言わずにさ。」

そう言って私の隣にズカズカと座るニース。

「聞いたよ、…ロニージョに、彼女が出来たって」
『…デリカシーの欠片もなく、そう直球に聞いてくるとは…
もう帰れよ!』
「まあそう言うなよ、まずは涙を拭きなよ」
『いらない!』
「だって涙で顔ぐちゃぐちゃじゃないか…」

そう言って奴は取り出したタオルを私の顔に押し付ける。

『…っ、余計な事を…!』
「余計でもやらずにはいられないよ

君みたいな女の子が涙を流してるのを放っておけるか」
『…』

口達者などこんな時に聞きたくない。

また顔を膝に埋めようとしたが、奴は会話を続ける。

「ロニージョも酷だな」
『言うな!あの人の悪口など聞きたくもないわ!』
「君に想われているという幸せな男だったのに、あいつは自ら放棄したんだ」
『やめろ…私だって悪いんだ…

気付こうと思えば、気付けた筈だったんだ』

あの人への想いに気付いたのは、あの人が他の人と付き合った瞬間。

初恋に気付いた瞬間は、失恋した瞬間。

なんと遅すぎたのだろうか。

でも無意識下では、あの人の優しさに甘んじていたのだろう…

『もっと早く、気付けば良かった。』
「…
ねぇ、サクラ」
『…なんだよ』
「俺も失恋したんだ」
『…は』

同情でもする気か。

「俺の好きな子は、俺よりも後に出会った男を好きになった」
『…』
「悔しかったさ、つれなくされても振り向かせる自信あったから尚更。

でもその子も失恋した。

そして今、俺の隣で悲しみに暮れている」
『……
何の冗談か知らんが帰ってくれ』
「冗談じゃない、真面目に聞いてくれ」

その話が誰の事言ってるかなんて馬鹿でも分かるだろう。

だが、「外国人=たらし」のイメージを私にこれでもかっ!ってぐらい植え付けた第一人者の言う事なんぞイマイチ信用できない。

「直球に言えば、俺のキモチ分かってよって話さ」
『お前…今失恋の感傷に浸ってる相手に言うか?』
「傷心に付け込むのも有効な手だと思ってるけど」
『それだから誠意っつーもんが見えないんだよ!
っつーか女たらしな貴様の一言一句信用できるかぁ!』
「!
ちょっとそれ言われるのは心外なんだけど!?
っていうか君は俺の事そういう風に思ってたのか!?」
『貴様の発言はただのヤりたいナンパ師の慰めぐらいに思ってる』
「酷い言われ様だな!」

正直言い過ぎたかも知れないが、それでも私の率直な感想だ。奴はかなりショックを受けた顔をしている。

まあいい少しはへこたれろ。

だが奴はショックを受けた顔から一転、急に真面目(恐らく)な顔になる。

「君は傷心に付け込む事を卑怯だと思ってるみたいだけど」
『…うん?』
「卑怯だなんだ言われようが、構わない。
それ程君が欲しいんだ。」
『…』

視線が絡み合う。

焼かれるような、熱い、真っ直ぐな瞳。

ドクリ、と心臓が焼かれる思いがする。

(『こいつ、こんな顔するのか?』)

奴は真剣なのか、それともただの軽口なのか、分からない。

…ただ、奴の瞳が、見ていられなくなる。

奴の瞳から視線を逸らす。

かと思えば顎を捕まれ強制的にニースへと向けられてしまう。

「なんで視線逸らしたんだい?」
『…』

─思えばこの男が私の前に現れる時、いつもその前に視線を感じていた。

まるで蕩けるような熱い視線。

今のニースの視線から感じるのは、それとまるで同じもの。

(『こいつからの…だったのか?』)

「いつも、見てたから。
だから、君が気付いてなくても君がロニージョの事思ってるって分かってたさ」
『…』
「…でも今は…
俺に向いてるみたいだな」
『!
有り得ないっ!!』

認められなかった。

あの人以外を、好きになれるという現実が。

「人の道はいくらでもある。…同じサッカーが好きでも、選手としてプレーする以外にマネージャーになって支えるとか監督となって指揮するとか」
『…だから?』
「君が俺の事好きになる事だって、あると言いたいのさ」
『まだ決まってないだろ!』
「俺の目が見れてない時点で確信は持てたよ。
今、君のキモチは俺に向かってる」
『何をっ…!』
「じゃあ試してみる?」

ニースの顔がゆっくりと近付いて来る。

何をしようとしてるか、嫌でも分かる。

五月蝿い程跳ね続ける左胸のせいで苦しい。

そのせいだ。私は奴に抗えなかった。

ニースの顔が超至近距離にある。
唇に、自分以外の暖かなものを感じた。

「…どう?抵抗しなかったね」
『…驚いて何もできなかっただけだ』
「はは、その割には落ち着いてたじゃないか」
『ち、違う』
「もう一回やりたいと思ったなら、恋に落ちた証拠だよ」

奴は柔らかく笑って、再び奴は顔を近付けて来る。

抗おうとすれば抗えたのに。
私には出来なかった。

目すら閉じてしまって。

再び触れ合う唇。

そして更に背中に腕を回され、強く抱き寄せられる。

…今私達は、これ以上ない程密着している。


どれぐらい密着していたのか分からない。
やっとニースが離れた。

「二度目も抵抗しなかった。
言い逃れは出来ないんじゃない?」
『…認めざるを、得ない』

苦しい心臓の鼓動。

しかしその苦しみの中に、幸せを感じているのも事実なのだ。

『…でも考えさせてくれ』
「え?」
『まだ気持ちが整理出来ていない』

今日初恋に気付き、今日失恋した。

そして今日また新しい恋を迎えるなど、あまりにもジェットコースター展開過ぎる。

それに、あの人への思いもまだある。

それを引き摺ったまま恋をするのは、私個人が許せない。

「…良いよ、待っててあげる」
『本当に待っててくれるのかー?
お前他の女にフラフラ行きそうだし』
「信じてくれよ、今の俺には君以外見えてない」
『それに待つ事への不安はないのか?』
「確信があるからな」
『いつも思うが大した自信だな…

仮に私が横恋慕でも良いからロニージョが良いとか言ったらどうするんだ』
「それは…─」

俺に惚れさせてるからそんな事はない、と言うと思っていた私の予想を超えた回答だった。

「君の恋心を、また探し出すだけさ」

(また誰かを、愛せる筈。)



Amore!』様に提出。
実は別の話だったんですが、自分のミスでパーになってしまい、期限延期して頂き今の形に…orz
申し訳ありませんでしたー!

2012/12/31(MON)


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