『人生は平等じゃない』 「…」 『お前も分かっているだろう』 彼女は俺の目も見ず、ただ遠い所ばかりを見て呟いた。 恐らく目線の先は、少しの星が輝く夜闇の空。 『私達は選ぶ事も出来ない』 「…それは違う」 『違うのか?』 俺は選び続けて、今の俺がある。 そう信じている。 『だが決定的に選べないものがあるだろう』 「…何が」 『出生』 「!」 『出生は縛られる。 なにより絶対的に抜け出られないもの… 血筋だ』 「っ…」 『環境から脱却できても、血筋は常に付きまとうんだよ』 何も言い返せなかった。 彼女は血筋を気にして病んでいる。 昨日だってうなされていた。 だが、そんな事ない、とも、そんな事でくよくよするんじゃない、とも言えない。 どちらも彼女の存在を否定しかねない、無責任過ぎる言葉だ。 「…だったら」 『だったら?』 「その重荷を俺にも背負わせろ」 『…』 虚ろな表情でこちらを向く咲良。 「本気で言ってるのか、と聞かれそうだから先に言っておこう。 俺は本気だ。」 『…』 「お前の血の罪をともに背負おう。」 慰めで暗に否定などしない。 例え重荷になるとしても、その重荷で彼女が存在するなら。 否定するのではなく、ともに背負いたい。 …好きだから、な。 柄にもない言葉が脳裏に過ぎり、少し恥ずかしさに浸った頃、咲良はやっと口を開く。 『…はっ、 下手な慰めよりよっぽど良い…か』 虚ろな瞳は、やっと俺を映し出した。 『宇宙論』様へ提出。 何の話しなんでしょうか 2012/12/31(MON) |