『チャンスウ』
「なんでsフゴッ…」
振り向いた瞬間、なんでしょうか、と聞く前に口が塞がれる。
そして同時に口に広がるほろ苦さが混じる甘味。

突然の事にチャンスウは頭が着いていけなかったが、咲良の手元をまず見た。
右手にはフォーク、左手にはホールの茶色いケーキ。
フォークは自分の口に向けられ、今自分の口に突っ込まれている物に刺さっている。

自分は今、咲良により何かケーキを食わされているらしい、とチャンスウの思考は回る。

「んごっ…」
『突然ですまないがまずは食ってくれないか
毒は入ってない、安心しろ』
「…」

口に入れられた分はどうにか咀嚼する。
広がるほろ苦さと濃厚な甘さ。

チャンスウは飲み込んだ後、口を開く。

「ガトーショコラ、…ですか」
『ああ
そして私の手作りだ

…おい、なんだその顔は』
「…貴女、バレンタインデーは普通の日だって…まあ今日は当日じゃありませんが」

“バレンタインデーなんてしたい奴がすれば良い、だから私はしない”と女ながら豪語していた彼女が何故バレンタインデーに乗っかった行為をしているのか。

『それだよ、“当日じゃない”じゃないか』
「…はい?」
『当日じゃないからバレンタインはしてない』
「…はあ」

彼女の言い分としては、今日はバレンタインデーではないからバレンタインはしていない、というものらしい。

「(…世間一般に通用しますかねぇ…)」

当日じゃないからと言って、世間にはバレンタインをやったものだと認識されそうなのだが。

『…私がしてないならしてないんだよ』
「凄く俺様な言い分ですね」
『っていうか、お前が誰にも言わなければ済む話だ』
「え」
『誰にもやってないからな、これは』
「えええ…
貴女の弟にも、ですか」
『そうだよ
…ほら、これ全部お前のだから』
「は、はぁ」
『で』

ケーキをチャンスウの手に渡した後、咲良はぐいっとチャンスウを引き寄せ、耳元で呟く。

『…愛を伝えるのに、時期なんて関係ないだろう
「っ!?」

じゃあもう行くから、と言って去る咲良。

心なしか、去り際の彼女の頬は紅く染まっているように見えた。


(私の思考回路が止まりました、どうしてくれるんですか)


チャンスウでバレンタインやりたくなるのは何故
とりあえずチャンスウは純情甘もヤンデレもいけると思う

2012/2/14(TUE)


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