透明の記憶

 夢は夢だ。だからいくら君が出てきてくれたとしても、それは幻。夢の中でどれだけ親しげに話し、笑い、隣で息をしていたとしても、それを覚えているのは現実の世界においてひとりだけ。夢から覚めた瞬間、すべてがゼロに変わる。はじめからなかったのだから喪失感を感じることは可笑しいのだけれど、それでも確かに、昨日はなかった筈のぽっかりとした虚が胸のうちに存在している。脆く崩れた透明な積み木、まどろみに見たつかの間の蜃気楼、幽霊のように現れる君の残り香。何のため人は夢を見るのだろう。会えるのは嬉しい、けれど目覚めれば寂しさと空しさだけが増している。今朝もベッドの上で頭を抱えた。現れたのはいつぶりか。目を閉じて暗闇にリプレイする嘘の記憶。目を開いて思う。今夜も出てきてくれるだろうか。きっとこない。もしも毎日逢えたなら、それが夢だとて、いつか満たされるだろうか。ああ、ただ現実の君に逢いたい。2015.09.13

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