こひとは、或はjupiter(あなたが幸せであれ)
私は、恋はできないけれど、愛することならできるのかもしれない。
私は繕う。
私があなたに見えないように。あなたから私が見えないように。
あなたからはただ、明るく微笑む私だけが見えればいい。泣き虫で短気、本当はずぼらでだらしがない。優柔不断で自意識過剰、そのくせ自分に自信がない。なにより弱虫な私の面倒くさい姿が、決して見えてしまったりしないように。貴方には私の汚い部分を見てほしくない。
本当の姿を見せることは大切なこと、尊いこと。それができて人は初めてその繋がりをより強固なものに築いていける。私はそれをあなたとはできない、しない。なぜなら私は私をあなたに知ってほしくないから。
あなたに出逢った瞬間、私の世界は色を変えた。突然私の胸の内に生まれ宿った灯はとてもあたたかく、やさしく、きれいで、私はそれにめまいをおぼえた。あなたは私の心のうちに足を踏み入れ、私の築いてきた距離を一瞬で無いものにした。
貴方に触れたい、けれどできない。貴方を知りたい、けれど私を知って欲しくない。
私は思う、「貴方だ」と。この世で最も私を酔わす音はきみの声、最も居たいと願うのはきみの隣ときみの心の中心。
その白く細長い指、私よりも大きな貴方の手。白い肌にぼこっとでたのど仏、そこから生まれ響き奏でられる貴方の声。目にかかる前髪、透き通った瞳、ふちどる睫毛、薄い唇、後ろから見える猫背の背中、やさしい空気と子供みたいに笑うところ。貴方のすべてが愛おしい。
私は私を繕うから、せめて愛を貴方に。まだうまくできる自信はないけれど、貴方のことを好いているの私だから、きっと貴方の幸せを心から願いたい。あなたの横に居るのが私じゃなくても。
(あなたの好きな星に貴方の最上の幸を願いましょう)
2015.09.14
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