わたしとあなたのラッキーストライク

「またね」

 そう言って別かれたけれど、お互いにきっと気がついていた。もうこの世で会う事はないこと、お互いに生き伸びることはないだろうということ。

 駆けながらふと、昔誰かから聞いた話が頭に蘇った。「さようなら」、と云う言葉は「左様なら」の語源にあると云う話。そうあるなら、そうならなければならないのなら、今はただ受け入れて、お互いにそれぞれの道を行くことにしましょう。日常のなかで何気なしに使っていた言葉が本当はとても深い想いのあるものだった、そう気づかされたときはひとつひとつの言葉を、言霊を思うように大事したいと思った。


 視界が開け、目の前に数人の武装した男の姿を確認した。私たちはあの瞬間、無意識にも「さよなら」と口にすることを避けた。それを言うのは恐かったし、なんだか寂しすぎるような気がしたから。悔しさもあった気がする。


「ということは」

 思う。まさしく絶体絶命と云えるこの状況下で、私たちは、この期に及んでまだ諦めてはいないらしい。思わず口がにやけるのを自覚する。既に短くなり始めているタバコを吐き出し、新しくタバコをを咥えジッポで火を点ける。肺を巡る煙のおかげで息が少ししやすくなった。ああ、私はまだ生きている。フィルターを噛み、隠れる事をやめた私は飛び出した。2015.9.2

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