like a plant


*トキヤ視点のSクラスで、デビューしてけっこう経ってからの話です。カップリング色は薄め。










実に奇妙な関係だ、とは学園時代から思っていた。それは、自分と神宮寺レンと来栖翔の関係のことである。特別仲が良いわけでは決してないと思う。プライベートで3人で会うことなんてほとんどないし、メールのやりとりをしているわけではない。(レンと翔の2人がどうなのかまでは知らないが)共通の知人や出演者と食事を取りに行くこともあるが、3人だけで出かけることなどない。

それなのに、何故か自分たちは3人セットで考えられることのなんと多いことか。確かに学園時代は同じクラスで、組んで課題をこなしたこともあった。でも、いつでもいっしょだったわけではない。ドラマや映画ではピンでの仕事の方がもちろん数は多いが、所謂バラエティ番組に出演するときのこの共演率の高さは一体何だろうか。(この顔ぶれに辟易することさえも飽きてきたくらいだ)
「君たちが揃うと、なんかウケがいいんだよね」という言葉を、何人のプロデューサーに言われたことろうか。数えてなどいないのだが。

私たちはグループではない。「ST☆RISH」というグループの一員同士ではあるが、私たち3人には明確なグループ名などつけられていない。当然、3人での仕事の際は楽屋は1人ずつに用意されている。……のだが、何故か楽屋は1つしか使われない。

「何故あなた方は当然のように私の楽屋に来るんですか」
「イッチーのことが好きだから」
「この方が打ち合わせとか色々ラクだから」

各々に言いたいことはあるのだが、レンの対処はもう頭が痛くなるほど面倒くさいし、そもそも2人を同時に相手にするのも体力を使うので、とりあえず放っておくことにする。不思議なのは、結局この2人を甘やかしてそばに置いてしまうことだ。そばに置くことが本気で煩わしかったならば、どんなに体力を消費するとしても楽屋からつまみ出すところだが、生憎いっしょにいても特に差し障りがないからこのような状態になってしまっている。何度も言うが、本当に奇妙な関係だ。

「オチビちゃん、クッキー食べる?」
「いらねえ、それ那月の作ったやつだろ」
「残念。じゃあコーヒー入れてあげようか?インスタントだけど」
「い・ら・ね・え!どうせカミュ仕込みの激甘のやつだろ!」
「もう。じゃあ何ならいいの」
「何もいらねえよ!バカ!」

……この喧噪にも慣れたてしまった自分は少し変になったのかもしれないとも思う。じゃれ合いを続ける2人を見て、ふと気がついたことがある。レンは冗談を言う時は人の目を見るが、翔は人の目を見ない。反対に真剣な話をする時、レンは視線をそらすが、翔は視線を合わせようとする。望んだわけではないがずいぶん長くいっしょにいたのに、今さら気づくようなことだってある。それと同時に気がついたのは、私たちのこの奇妙な関係が続いている1つの理由。

私たちは、決してお互いと向き合わないのだ。それは悪い意味ではない。人と向き合うのには労力を使う。他人と向き合うことは、はまらないはずのパズルのピースを必死ではめようとする作業とよく似ている。違う部分を擦り合わせ、何とかはめ合わせるために自分をギリギリとやすりで削る。それは酷く精神を消耗する行為だ。
私たち3人は、向き合わない。同じ高みに向かって、同じ方向を向いている。深くは交わらないが、ぶつかることはない。その軌跡は直線ではないが、きっといつの時点でも平行線なのだ。

「交わって、ぶつかるばかりが友情じゃない」
「何か言った?イッチー」
「いいえ、何でも。打ち合わせしましょうか」
「おいレン。今日こそ突拍子もないこと言うなよ。恥ずかしい話とかすんなよ」
「えー、オチビちゃんの可愛い話、すごくウケるのに」
「可愛い言うなっ!」



(私たちは、同じ未来を向いている)
(それは、貪欲に光を求める植物の如く)



* * *

トキヤ視点でSクラスを書くのが楽しすぎる。視線の話はただの私のイメージです。
20140108
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