ごめんなさい、返品不可です


*レン翔小ネタ。元拍手お礼文です。







ファーストキスってどんな感じだろうなん考えて、こんなことは男が考えることじゃない!と思い当たって思い切りかぶりを振った。放課後の教室で課題をやっているはずがまったく集中できない。隣に座って雑誌を読んでいるレンは、そんな俺の様子などどこ吹く風、といった体だ。
そもそも俺がこんなことを考えてしまっているのには理由がある。「翔ちゃん、ぼく、さっきハルちゃんとちゅーしちゃったんです!」と嬉しそうに那月が話してきたのは昨日の夜のこと。「わざわざ報告すんな!」と怒鳴ったのも記憶に新しい。俺が今もんもんとしているのも、つまりはそれが原因なわけである。

「そういえば、シノミーがあの子とキスしたってはしゃいでいたね」
「……あいつ、そんなに言いふらしてんのかよ……」

どうやらレンも雑誌を読んでいる風で、俺と同じことを考えていたらしい。

「残念。ファーストキスはレディに先を越されちゃったね、オチビちゃん」
「はっ!?」
「守りたいなら隠さないと」

一体何を言っているんだ、という言葉が生まれてくるはずだった唇は、言葉を押し出す場所を失った。ついでに言うと、息を吐くことも、吸うことも許されなくなった。見開いた目に映るのは端正なレンの顔。その時間は一瞬であったのに、ひどく苦しかった。

「ほら、盗まれた」

世界が歪んだ。と思ったのは、レンが「ね?」と小首を傾げたからだった。1つわかったことは、ファーストキスを終えても世界が劇的に変化したりはしないってことだった。



(ファーストキス、返してください)



* * *

久しぶりにレン翔を書きました。
奇跡的にかっこいいレン様が舞い降りてきたので。ネタ元は某乙女ゲーの某キャラソンより。
20131105


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