充ち満ちて、愛


*元拍手お礼文。レン誕でSクラスです。










昔から、2月という時期が嫌いだった。だって、12ある月の中で、2月だけが28個しか日付をもつことを許されていない。それは何だか、12の月の中でもひどくみすぼらしく思える。そんな2月に生を受けた自分自身も、何かが欠落しているような気すらしてくる。まあ、そんな気になるのは実際に俺には欠けているものばかりだからなのだろうけれど。(要は、自分の欠点の理由を何かのせいにしたいだけだ)
そのくせ、周りからは俺は何でも持っていると思われているということが、余計に俺の心中を卑屈にさせた。詰まるところ何が言いたいのかと言えば、俺は自分の誕生日など祝われても欠片も嬉しくないということだ。そう、俺の上っ面だけを見ている奴に祝われることなんて。



「ハッピーバースデー、レーン!」
「おめでとうございます。レン」

リューヤさんに呼ばれている、そう言付けされて向かった放課後の教室は、いつもと様子が違っていた。

「あれっ?ちょ、なんか反応ないけど、俺なんか間違った?」
「落ち着きなさい、翔。レンにだって驚く時くらいあるということです」

自分のことを見ていてくれる人からの祝福が、こんなにも、胸に刺さるほどに嬉しいだなんて、今まで知らずに生きてきた。小さな欠落が一つ埋まったような、そんな充足感が広がる。どうしてこんな時に、巧い言葉が何一つ出てこないのだろうかとぼんやりと思う。きっと伝えたい言葉が大きすぎて、一つしかないこの小さな口からは出てくることが出来ないのだ。神様はどうして人間にもっと大きな口を作らなかったのだろうと、信じてもいないものに愚痴をこぼす。
今の俺でも言える言葉が一つだけ見つかった。その言葉は、感謝を表すためにはとても便利な言葉で、でも生きていく中でとても大切な言葉で、それでいてディテールはさっぱり伝わらないもどかしい言葉だ。

「……ありが、とう」

「ありがとう」すらスムーズに言えない自分が情けないが、さっきまでの卑屈な自分よりはだいぶマシなような気もする。



(いつか、もっと素直な言葉で)
(いつか、もっと素直で満たされた自分で)


* * *

Sクラスが好きすぎて眩暈がします。神宮寺おめでとう!
20130912


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