夜の夢
*レンと翔が音也に片思いしているというカオスな話です。暗めなのでご注意ください。
珍しいこともあるものだ、とふと思う。珍しいこととは、楽屋にオチビちゃんと2人きりというこの状況のことを指して言っている。別に仲が悪いからというわけではない。どちらかと言えば仲は良い方の部類に入ると思う。(自分が最も気を許せる友だちのことを親友というのであれば、きっとオチビちゃんは俺の親友ということになるだろう)単純に、いつもはイッチーや聖川が誰よりも早く楽屋に入って準備をしていることが多いからということだ。
何気なく点けていただけのテレビから流れる声に、2人同時に振り向いた。「俺が君の、太陽になるよ」という台詞とともに画面に映し出されているのは、同じグループのメンバーの一十木音也であった。それは彼が主演を務める映画のCMで、最近はよく目にする。
ああ、さっきはとても重要なことを忘れていたけれど、俺とオチビちゃんは親友だけど、ライバルでもある。それは、この一十木音也にただならぬ思いを抱いているという点において。俺たちがレディだったとしたら、小説にでもなりそうなドラマチックな展開になっていたかもしれないが、生憎俺もオチビちゃんも男だ。もちろん一十木音也も男であるから、俺たちの関係は不毛さでいうならば完璧なトライアングルであるといえる。
「本当、いつ見てもハマリ役だね」
彼は太陽だ。中心部には爆発的なパワーを秘めていて、その輝きは眩しすぎるから、まっすぐ見つめることさえ困難である。その無邪気さは人を惹きつけ、魅了する。沈んでしまうと急にそれが惜しくなって、早く会いたいと願う。そのエネルギーは強大すぎるが故に時に罪だ。
「……なんつーかなー、仲間だし、タメのはずなのに、置いてかれてるような気がすんだよなー」
「頑張らなきゃダメだな、俺も」と呟くオチビちゃんの目は、彼自身は気がついていないけれどもしっかりとエネルギーを発している。喩えるならば、それは自分自身を燃やして光り続ける小さな星。太陽ほど爆発的なパワーをもたずとも、一途に身をすり減らして輝く星。
「オチビちゃんは星だから、大丈夫だよ」
そう言葉にしてから、今の発言は電波系のそれだったかもしれないと思う。ふと思い浮かぶのはシノミーのこと。「翔ちゃんはお星様ですね〜」っていうフワフワした声と言葉。まったく自分にしてはらしくなさすぎて反省した。
「じゃあレン、お前は月だ」
自らの言動に自嘲気味に笑う俺をまっすぐ見つめて、オチビちゃんは言った。俺は月だと。成る程、と妙に納得する。綺麗な面だけを見せてクルクル回っている月の裏側は本当はボコボコの穴だらけで、それでも虚勢を張り続けるように頑なに綺麗な部分だけを見せるところが、自分にそっくりだと思った。
きっともうすぐ、テレビの中ではない本物の太陽がこの楽屋にやってくる。それを待ち遠しく思っているのは、きっと俺たち2人とも同じなんだろう。
(月も星も、夜に輝く)
(太陽に近づける日は、いつか来るのだろうか)
* * *
何を書きたかったかというと、太陽と月と星の話を書きたかっただけで、こんなに暗くて救いようのない話になるとは思っていませんでした!←
それにしても、いったいどこに需要があるのかわからない話ですね……。この後、音也が春ちゃんと付き合ったりとかして、レン翔レンで慰め合えばいい。
20130830
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