自由


*元拍手お礼文。音→レンな小ネタ。









「素直であることは貴方の美徳かもしれませんが、もう少し考えて発言することを覚えた方がいいですね」そうトキヤに言われたのは、昨日の夜のことだった。「お前は一言多いんだよ」と翔に呆れたように言われたのは、ここに入学してすぐのことだったか。思ったことをすぐに口に出してしまうのは、幼い頃から培われてきた俺の特性のようなものだった。それは、素直でいいと誉められることもあったが、浅はかだとたしなめられることもあった。長所と短所は紙一重、なんて言葉があったような気もする。(俺としてはあまり気にしていない、こんな自分をけっこう気に入っている)

そんな俺が最近どうも気になっているのが、神宮寺レンという存在。何もかもを、いつだって事もなげにやってみせるレンだけれど、自分の本当の気持ちを言葉にすることだけは下手くそなのだろうと思う。レンが苦しそうな顔をしているのは、きっと悶々とした思いを上手く言葉に置き換えることができないから。俺みたいに、素直になれれば楽なのにね。

「レンは、いつだって苦しそうだね」

レンの形のいい唇が何も言わずに弧を描くのが、俺には息苦しそうに言葉を飲み込んでいるように見える。今だって、俺のストレートな言葉に困ったような様子で笑うだけで。ねえ、もっともっと、息をするのと同じくらい自然にさ、言葉を紡いだっていいと思うんだ。

「俺が、助けてあげる」

人工呼吸のようなもののつもりで仕掛けたキスは、やり方なんてわからないからただ唇を奪うだけの酷く乱暴なものになってしまった。それに驚いたレンが、

「……バッ、カなの?イッキ?」

と声を荒げたけれど、その言葉は何だかとても素直で正直に聞こえたことが無性に嬉しかった。



(俺が君を、自由にしたい)



* * *

口が上手い神宮寺だけど、素直な気持ちを言うという点に関してはすごく口下手だよなあと思っていたら自然とできたもの。音也にバカという神宮寺がすごく好きです←
20120502



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