灯りを消してしまおうか


*HAYATO×レン♀です。トキヤとHAYATOは本当に双子だった設定なので、ご注意ください。










初めて彼と出会ったのは、早乙女学園に入学してすぐのことだった。
何故か無性に彼に会いたいと感じるようになったのは、イッチーが春歌と付き合いだした頃だった。
彼と初めて身体を繋げたとき、そして今も、私たち2人の関係を形づくる言葉など何一つ交わされないままだった。



『レンちゃん、おはやっほー☆★
 今日の21時から、いつものトコで会えるかにゃ?(^^)』

「……素直に溜まってるからヤらせろって言われた方がまだ可愛げあるわね」
「レンちゃん?何か言いました?」
「いいやー、こっちの話」

じっとメール画面を見つめていると、何だか苛立ちさえ覚えてくるような文面だ。テレビ用に作られた性格なのかと思いきや、素でああいう喋り方をするような人物だとは、初めて会うまでは思いもしなかった。(あんなにイッチーに顔が似てるんだもん、性格だって少しくらいは近いと思うじゃない)私のイライラがいい加減募ってきた時に、待機時間を過ぎて画面の明かりを落とす携帯電話はなかなかいい仕事をしている。そのまま携帯をかばんの奥深くに押し込んで、春歌に続いて部屋を出た。



テレビではなく、本当に出会った初対面、第一印象は最悪だった。イッチーと同じ顔、同じ声質で「よろしくにゃ!」とか言われて。頭悪そうで、軽薄そうで、でも芸能界でやっているんだからけっこう腹黒かったりするんだろうなとか思った。とりあえずいつものよそ行きの顔で愛想振りまいて。彼のファンだという春歌が頬を真っ赤に染めて感動していたことをぼんやりと覚えている。
もう一生テレビ以外で見なくてもいいなと思った相手に、社交辞令で交換したアドレスで連絡をとってしまったのが2カ月前のこと。触ったらひやりと冷たそうで、ふざけている私を見る視線なんてブリザードそのもので、でも何だかんだと面倒見のいいイッチーのことが私は好きだった。基本的に、私に甘い、デレデレした男は恋愛対象外だ。できるだけ私に冷たい人が好みだった、私のことを外見で判断しないでいてくれるんだってことがわかるから。この人ならありのままの私を見てくれるかもっていう期待を持てるから。まあ、私とイッチーの関係はそんな冷たい関係のまま、始まりもせずに終わってしまったわけだけど。
正直、慰めてくれる都合のいい男なんて腐るほどいた。でも、どうせならイッチーと同じ顔に抱かれてみるのも何だか背徳的でいいのかもしれない、なんて。そんな馬鹿げたことを考えてしまうくらいにはショックを受けていたのかもしれない。
そして、二度目に彼と会った時、私は想い人と同じ顔をしたその人に抱かれた。セックスをする時、普段の気持ち悪い話し方はなく、無口になるところだけは好感が持てた。最中は明かりをつけていてほしい、と懇願した。それはずっと彼の顔を見ていたかったからで。彼が絶頂を迎える時、眉間にギュッと皺を寄せる表情がいつものイッチーにそっくりで、今までにないほど感じた自分がいた。彼とは、その時からずっと定期的に身体を繋げるような関係を続けている。



「レンちゃーん!会いたかったよー!」
「うるさい、寄るな、仕事しろバカ」

いつものトコっていうのは、財閥の令嬢でもある私でも少しだけ尻込みしたくなるほどの高級ホテル。稼いでるのねーなんて、ちょっと下世話なことをつい思ってしまう。(早乙女学園に入って、何か私は庶民臭くなってきた気がする)芸能人がプライベートを過ごすのにはうってつけのホテルで、いつ誰と利用したとか、情報が漏れることは一切ないらしい。

「うぅ……そっけない……」
「はいはい、安っぽい演技いらないからねー」

私が愛想をつくるのをやめた人間は、早乙女学園に入学してから劇的に増えた。でも、私がここまで適当に扱う人間なんて、彼以外にはいないかもしれない。それなのに、何故彼は私との関係を続けているのだろうか。そもそも、彼は私が自分の影にイッチーを見ていることに気がついているのだろうか。

(そして、私はどうしてこいつを拒むことができないんだろうか)

身体の相性がいいのは事実だった。でも、私が彼にイッチーを重ねていて、イッチーに抱かれていると錯覚することで快感を重ねていることもまた疑いようのない事実だった。なんて不毛な行為なんだろうと思えば思うほど、罪の意識を確認するたび、それすら快感に変わる私はこいつに影響されて頭のネジが何本かすっ飛んでしまったのかもしれない。

「レンちゃん今、僕のこと考えてたでしょ?」
「は?自惚れないでよ、バカ」
「レンちゃんがねー、僕のことバカっていうのけっこう好きだにゃー」

へにゃん、と幸せそうに垂れさがった目尻とその科白に一瞬思考が停止しかかる。自分の顔に血がのぼっていることが、鏡を見なくても容易にわかった。「好き」なんて、そんな言葉、今までただの一度だってくれなかったくせに。

(『くれなかった』くせに?)

違う違う。今のは『言わなかった』くせにの間違いで。というかこの動揺はつまりイッチーと同じ顔でこのバカが好きとか言ってくるからで。だから、

「あのね、レンちゃん」



(灯りを消してしまおうか、と彼が言う)
(それは、灯りを消して今日は僕の存在だけを見てという、彼からのメッセージ)



* * *

HAYAレンでしかもレン♀とか、いったいどこに需要があるのでしょうか。なんて思いながらも、書いてる本人はものすごくノリノリで書けた代物です←
まずレンのことを「レンちゃん」と呼ぶHAYATO様が降臨してきて、それならレン♀がいいなあと思い、そしたら今度はHAYATO様につっけんどんな態度をとるツンなレンちゃんが浮かんできて、気が付いたらこんな話になっていました。でも結局はHAYATOの方が一枚上手だと思います。
もし需要があればまた書きたい組み合わせでした(^^)
お題はTV様からお借りしました。
20130110


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