定期テスト


*トキ→レン気味の小ネタ。トキヤが微ツンデレです。













コピー機が好きだ、と思った。ガーッという音をたてて、あたたかい紙が流れ出てくる。このあたたかさが好き。それは無機物なのに、少し優しい気がするからなのかもしれない。冷え性な私は指先や足先がどうもすぐに冷えてしまう。そんな時に、このあたたかさはとても心地よく感じられるのだった。
紙に印刷されているのは、昨日まとめた授業のノート。一週間後にはテストが控えているので、いつも赤点をとって泣きを見ている翔に頼まれたのです。これを使って、少しでも成績が上がれば良いのだが、と一人ため息をついた。



「おはようございます。翔、ノートのコピーです」
「サンキュー、トキヤ!恩にきるぜー」

翌日、早速コピーしたノートを翔に渡す。すると、ちょうどレンも教室に入ってきたところだった。レンはいつも始業ギリギリにならないと教室に姿を見せない。そのことを本人は「あまり早く登校するとレディに捕まってしまうからね」などと言っていたが、ただ単に朝が弱いためにこの時間になってしまっているだけだろうと私は思っている。

「へぇ、イッチーはやっぱり几帳面なんだね」

翔の手元の紙を覗き込みながら、レンが感心したように言葉を漏らす。その几帳面、という言葉は、どうも褒められているのかそうではないのかわからなくて、人に言われる度にモヤモヤする言葉のひとつだ。

「レン、どうぞ」
「……俺にもくれるのかい?」
「勘違いしないでください。コピーしすぎただけですから」

嘘だ。本当はわざわざ2倍のお金を入れて、わざわざ2倍の時間をかけた。でもそれは、あたたかい紙をもう少し触っていたかっただけだから。だから。

「ありがとう、イッチー」



(だから、この顔が見たかったとか、決してそんなんじゃありません)



* * *

ツンデレトキヤが書きたかった。それだけ←
末端冷え性な私が卒論の文献をコピーしていて考えついた話。私のイメージの中で、トキヤと神宮寺さんは冷え性です。手がホカホカそうな音也あたりにあたためてもらったらいいと思います(^^)
20111114

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