友達以上で、そして恋人


*翔ちゃん女体化注意。音翔♀です。













一目見た時から君のことを好きになってた。そんなことを言ったら、あぁ顔で選んだんだね、って思われるのかもしれないけれど、そんなんじゃない。



この早乙女学園に入学して、とにかく毎日が楽しかった。ずっと憧れていたアイドルに近づくための勉強は面白かったし、新しい友達が大勢できるのも嬉しかった。寮生活も俺にとっては好きなものの1つで、誰かに会いたいなとか、これを伝えたい、共有したいって思う時にすぐに友達に会えるのが幸せなことだった。施設にいた時も、家族がいっぱいいるみたいで楽しかったけど、今の生活も大好きで。毎日がキラキラ、まるで宝物みたいだったんだ。そんななかで、俺の学園生活がもっとキラキラになる出来事が起こった。それは運命だと思った。
同じクラスの那月が、「僕が幼い時からのお友達なんです」って紹介してくれた女の子。柔らかそうな金色のセミロングの髪、それを片側だけ真っ赤なヘアピンでお洒落に留めている。そのおかげで見ることができる形のいい耳たぶには、シルバーのピアスがひとつ。綺麗な夏空みたいな色をした瞳はこぼれそうなほどに大きくて、肌は人形みたいに白い。俺よりもずっと小さいその子が、ニッと、その美少女然とした見た目の印象とは少し違う雰囲気の、悪戯好きの少年のような顔で笑って。

「よろしく。俺、来栖翔子」
「もう、翔ちゃん!女の子が俺なんて言っちゃダメです!」
「うるさい、那月!翔、って呼んでくれよ。な、音也?」

そう言って俺の肩をポン、と叩く。それに俺が何と返事をしたかは、全然覚えていない。それほどまでに、俺はそのときすでに翔に夢中だったんだ。
それからはよく翔と顔を合わせるようになった。翔が俺のパートナーの七海と寮で同室ってこともあったし、翔は那月とも本当に仲が良かったから、よく学食でお昼を食べたり、一緒に遊んだりもした。那月に言わせると、「翔ちゃんはちっちゃい頃からほんとにお転婆さんで……あんなに可愛いのに……」だそうで、小さな頃から男勝りだったらしい。特技は空手で、1対1だったら男よりも強いとか、性格もサバサバしていてすごく男らしいとか、そういう類の話を那月や七海からたくさん聞いた。そんな翔だからなのか、男友達とつるんでいることの方が多いようで、同じクラスのトキヤとかレンなんかと一緒に行動していることが多いようだった。
翔は本当に可愛いらしくて、学内にファンクラブまでできていたし、恋愛感情かどうかは人によると思うが、周りにいるみんなが翔に夢中だと思う。俺だって例に漏れずそのうちの一人で、屈託なく笑う表情とか、何事にも真剣に取り組む姿勢とか、溢れ出る優しさとか、そういう翔の全部に惹かれていた。俺は昔から我慢するのは苦手な性格だった。思ったことも割とすぐに口に出してしまう方だったし、人に隠しごとをするのも嫌いだ。そんな俺が、この気持ちを黙っていることなんか、出来る筈がなかったんだよね。

「えっと、翔のこと、初めて会った時からずっと好きだったんだ、だから……」

俺と付き合ってください、そういうつもりだった。でも、その告白は翔の言葉によって遮られて、そのまま俺の中にしまい込まれてしまった。

「お前も、俺の外見が好きなんだ」
「え?」
「……ごめん、恋愛とか興味ないから」

思えば、伝え方を間違ったのかもしれなかった。ただ確かにわかることは、俺は振られてしまったということ、それだけ。俺が翔を好きだという気持ちは、止まることを知らずに零れ出てくるのに、それを吐きだす術を俺は失ってしまった。でもその思いは自分ではどうすることもできない。どこにも行き場がない。まるで、溢れた思いに溺れてしまったかのように息苦しくなった。振られるということがこんなにも苦しいことだと初めて知った。振られる、ということは恋愛を強制的に終わらせられることで、それは驚くほどに残酷だった。
後から知った話だけれど、勿論翔は色んな奴にモテていたから、告白なんて日常茶飯事だったらしい。何度も何度も、男たちが思いをぶつけてくる。そんな日常を俺は想像してみた。話したこともないような知らない人に告白される、あなたが好きです、それがどうした、あなた誰ですか。今まで友達だと思っていた奴から告白される、ずっと好きだったんだ、そうしたらどう思う?
お前もあいつらといっしょだったのか、って思われない?俺なら思う。友達だと思っていたのは自分だけだったのって。ねぇ、やっぱり俺は伝え方を誤ったんだね。言わなきゃならないもっと大事なこと、たくさんあったんだね。もう一度、今度は上手に伝えるから、頭悪くてどうしようもない俺だけど、今度は間違えないから。だから聞いて。

「友達の好きじゃ、足りないくらい好きだから。翔のぜんぶが、言葉じゃ言えないくらい好きだから」

だから、俺と付き合ってください。二度目の告白は、不器用すぎてやっぱりカッコよくは決まらなくて、でもどうかこれで伝わりますように、って願うことしかできなかった。この世の中にある言葉なんてそんなの限られていて、でもこの思いは限りなく溢れてくるんだから、言葉で言えるわけなんてないんだよ。

「この前言った、恋愛に興味ないって、あれは本当」
「……うん」
「でも……一十木音也って人間には、興味ある」

翔の瞳が挑戦的に俺を見上げる。その瞳はまるで俺の心の中を見すかしているかのような、それくらい綺麗な瞳。いっそのこと俺の考えていることが、全部翔に見えてしまえばいいのに、と思った。嘘偽りなく君を想う、俺の気持ち。翔が好きだよ。どんなにみんなに顔で選んだって思われたとしても、胸を張って違うんだって言えるくらい、君のいいところいっぱい言える。

「……男みたいでも、嫌じゃないのかよ」
「関係ないよ、翔は翔だもん」

君という人間が、堪らなく好きだから。だからこれから、呆れるくらい一緒にいよう。ほんのりと頬を赤色に染めた翔が愛しくて、やっぱり我慢なんてできずに抱きしめた。



(抱きつくなっ、俺、まだ返事してないだろ!)
(聞かなくてもわかるよ、真っ赤っかだもん!)



* * *

はじめての翔♀でした。唯か翔子か迷って翔子に。唯と言われるとやっぱりあの翔ちゃんが演じてるモデルの子のイメージが強くなるので。
翔♀は男勝りなのが好きです。恋愛も興味なくて、性格も男気全開で。そういうイメージなので、やっぱり仲間に告白されたら傷ついたりしそうだなーと思って書いたものです。ただ、友達でも「好き」という気持ちがあるのならば、それはいつでも恋愛の「好き」に変われるものなのだと思います。そしてその恋愛の「好き」に変わるのなんて一瞬だよね、って話。特に音翔♀は音也が直球なので、友情が恋愛に変わるのも簡単なのではと思います。そして恋愛の「好き」に変わった瞬間に、照れはじめる翔ちゃん。それが私のジャスティスww←
20111112

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