つないで、手


*付き合ってるのかそうじゃないのか、よくわからん音翔小ネタ。ほのぼの。













随分と日が落ちるのが早くなったものだ。練習室には窓がないから、レッスンに熱中しているとついつい時間を忘れてしまいがちで、部屋を出ると廊下の窓から見える景色が真っ暗だから驚いたのだった。エントランスを出て、寮への道を急ぐ。この時期は昼間は暖かいのだが、太陽が沈んでしまうと急激に寒くなるのだ。昔はよくこの時期に風邪をひいて、薫を筆頭に家族には心配をかけたものだった。(それにしても、寒い)明日からはもう少し防寒対策をして登校しよう、と心に決める。昔よりもだいぶん身体は強くなったといっても、風邪なんかひいてしまえばやっぱりアウトだ。そんなことを考えながら歩いていた。

「翔―!いっしょに帰ろ!」

後ろからでかい声で俺を呼んだのは音也で、俺を見つけて走ってきたのか、息が弾んでいる。「寒いねー」なんて言いながら俺の横に並んだ音也を見上げると、鼻の頭が真っ赤で、つい笑ってしまった。

「翔、手、つなごうよ」
「は?」

パッ、と音也が開いた手のひらを俺の目の前で得意気にかざした。言動が唐突なのはいつものことだ。

「俺ね、手があったかいってよく褒められるんだよ」
「だからって手なんか繋げるか!男同士で」
「いーじゃん!そんなの。暗いし、誰も見てないから」

強引に、音也の左手が俺の右手に伸びてくる。その手は俺の手よりも幾分か大きくて、思ったよりもゴツゴツとした男らしい手だった。きっとこれはギターを弾くやつの手なんだな、と思う。そんな音也の手は、自負しているだけあって本当にほんわりあたたかかった。それが何だか心地よくて、何も言わずにそっと握り返したら、またギュッと握り返されて。そのまま手を握ったり、握り返されたりしながら、俺たちは帰ったのだった。



(寒いのも、たまにはいい)
(だって、あたたかいものをあたたかいと思えるから)



* * *

ほのぼのとした話を書きたい時は音翔に限りますね。翔ちゃんが寒がりだったらすごい可愛いと思う。音也は何となく寒さに強そうなイメージ。公式ブログで冬に半袖で過ごしたとか書いてたからでしょうかww
本当は吐く息が白いという表現を入れようと思ったのですが、今の時期に吐く息が白いのって北海道だけかと思い止めました。北海道はもう16時半には日が落ちますよ。もうすぐ雪の季節です。私の小説の季節感がおかしいと感じたら、それはきっと私が道産子なせいです←
20111107

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