呼吸


*付き合っている那翔の小ネタ。













生あるものは全て、いつか枯れていくのだと思う。それらは自分の枯れ時をよくわかっているものだ。時期が来ると萎れる花のように、人は息をすることを放棄すれば枯れていくのだ。そして、土に還る。だから、自分の咲き時には精一杯呼吸を繰り返す。吸って、吐いて、そして生きている。俺も、お前も。だけど、ただ矛盾していくこの思い。

「俺のこと見てる時は、息もしないで」
「……わかりました」

少し、那月を困らせたいと思った。いつも翔ちゃん翔ちゃんと飽きずについてくるものだから、そんなに俺のことが好きならそれくらいやってみやがれ、ってつい勢いで。(思えば、思うように練習が進んでいなくて苛ついていたのかもしれない)それが、こいつはあっさり承知するもんだから、こっちが吃驚してしまった。(やっぱり那月ってバカなんだろうか)

「……無理だろ」

ていうか、本当にできたらヤバいだろ。それこそ人外か変態(この場合は変体か?)だろうと、うろんな目つきで那月を見る。まさか、北海道生まれの人間は、大自然の力で光合成とかができて酸素を作れるんだろうか!と考えて、心の片隅で北海道の皆様方に謝罪した。ちょっと変なのは那月だけであって、北海道の皆様には何の罪もない。

「そうだね、ずっとは無理かなぁ。僕死んじゃうかも」

のほほん、という言葉がぴったりな笑顔で言う那月は、俺の意味不明な我儘にも動じた様子はない。困らせてやりたくてこんなことを言い出したのに、むしろ今困っているのは自分の方なのではないかという気すらしてきた。

「あ、でも!」
「あ?……ちょっ、」

ふいに強引に那月に唇を奪われた。またか、という思いがまず頭を掠める。本当にこいつはキスが好きで、この身長差で俺が抵抗らしい抵抗もできないのを知っててやっているのだろうか、だったら性質が悪い。一応付き合っているのだから2人きりの時なら許すけど、いつか調子に乗って人前でやりやがったら殴る、絶対。

「キスしてるあいだは息が出来ないから、ずーっとしてたらいいんじゃないかな?」
「はぁ?」
「まぁ、それは冗談だけどねぇ」

駄目、こいつぜんっぜん困ってない。むしろ楽しんでいる。どうして俺はいつも那月に振り回される方になってしまうんだろうか。

「翔ちゃん」
「……何だよ」
「キスしてる時はずっと翔ちゃんだけを見てるよ。それじゃ、ダメ?」

そう真剣に那月が言うから、俺は自分で言った我儘が恥ずかしくなってしまって、バーカ、とだけ言って目を逸らしてしまったのだった。

俺たちは精一杯呼吸を繰り返す。それは生きるため、お前の隣りにいるため。でも少しだけ、身体のなかをお前でいっぱいにしたい時だけ、



(息もしないで、キスをして)



* * *

私の書く翔ちゃんは口が悪い。私の書く翔ちゃんは可愛くない気がする。どうやったら可愛い翔ちゃんを書けるのか、誰か教えてください(^^)←
翔ちゃんはなっちゃんにだけ、たまにとんでもない我儘を言っちゃってたりしたら可愛い。そしてその我儘をなっちゃんが叶えてくれて、逆に翔ちゃんが困ればいい。結局那翔は翔ちゃんがなっちゃんに振り回されてるのが好きな私ですww
20111101

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