大丈夫、ほら


*レン総受け。翔ちゃん視点なので翔レン翔気味です。フリリクくださったレン受けに飢えてる人さんに捧げます。













どうしていつも女に囲まれてるんだよ?そんなに女が好きなのか?と、一度だけレンに聞いてみたことがある。そうすると、レンは印象的なたれ目をもっとたれさせて困ったような顔をして、こう答えた。「女の子って、あったかくて、柔らかくて、俺にないものをたくさん持ってるからかな」って。そうしたらまた疑問が溢れ出て来て、いいやこの際だから聞いてしまえ、と日ごろから聞きたかったことをもうひとつ聞いてみた。どうしてレンは楽しくもないのにいつも笑えるんだ?「……自分に向けて笑いかけてもらわないと不安になるから、俺は笑うのかもしれないね」と、レンは困っている癖してやっぱり笑う。レンがいつも笑顔を浮かべているのは、自分に向けて笑ってほしいからだという。レンが女の子に優しいのは、自分が優しくしてほしいからだという。俺は、そうしないと愛してもらえないから、と。無条件で俺を愛してくれる人なんて、いないからね、と。今度は寂しそうに笑った。(ほら、また楽しくもないのに笑う)



そんなことはないのに、と俺は思った。そういえばこの前、トキヤが、レンのことを酷く心配していたのを思い出す。レンの元気がないですね、ってポツリと呟いていて。俺はそれに気が付けなかったから理由を聞いたら、「いつもと歌声が違います」と言われた。トキヤは、実はあまり他人に興味がない人間だと思う。でも、自分が認めた人間のことは放っておけない性質だ。そのトキヤが、レンの歌の調子をいつも敏感に感じ取っている。あぁ、意識しているのだなとすぐにわかる。そしてただライバルとして意識しているだけではなく、純粋に仲間として心配していることもわかる。しばらくして、レンの歌声がいつも通りに戻った時、とても嬉しそうな満足げな笑みをトキヤが浮かべていたことは、多分俺しか知らない。

音也だってそうだ、あいつが寮の廊下をバタバタ騒がしく駆けまわっているから、どうしたのか聞いてみたら、レンを探しているんだという。レンなら出かけたと思うけど、と言ってやったら、そりゃあもう目に余るほどの残念がりようで。どうやら部屋で1人でギターを弾いていたら、レンのイメージにピッタリのメロディと詩を思いついたんだとか。聞かせたかったなぁ、今すぐに、なんてまるで絵に描いたような落ち込みっぷりだった。しょうがないから翔でいいや、なんて言われて(しょうがないってなんだよ)聞かせてもらった曲は本当にレンの姿が思い浮かぶようなフレーズだった。キラキラしてて、でもどこか切なくなるようなそんな曲。音也って、レンのことよく見ているんだなと実感した瞬間だった。

いつもレンと顔を合わせるたびにいがみ合っている聖川だって、実はレンがいない時は少し寂しがっているのを、レン以外の人間は知っている。いつだったか、レンが家の用事で何日か学校を休んで寮を留守にした時があった。その時に学食で那月と音也と聖川といっしょになって。「毎朝神宮寺を叩き起こしているから、それがないとどうも調子が出ない」なんて大真面目な顔して聖川が言うもんだから、みんなで笑ってしまった。レンは低血圧で、朝にすげー弱いから、いつも起こすのに一苦労なんだってさ。それこそ文字通り「叩き起こす」って感じなんだろうな、って想像したらまた笑えた。喧嘩腰な会話がデフォルトみたいに思われてるあいつらも、きっと部屋で2人でいるときは、意外と仲がいいんだろうな。

昨日だって、那月が部屋のキッチンでまた一人で料理してやがるから、恐る恐る覗いてみたら(軽く言ってるように思われるかもだけど、まじで決死の覚悟だぞ)レンにやるためにお菓子を作っているとのことだった。レンは那月の料理を美味しく食べることができるという特殊技能の持ち主で、それが那月にとってはものすごく嬉しいことらしい。「レンくんは刺激的な味が好みだから、隠し味はいつもこれなんです」と言いながら、嬉々として料理を進めていく那月。「ねぇ翔ちゃん、レンくん喜んでくれるかな?」と聞かれたから、力いっぱい頷いておいた。最近Aクラスは課題が多くて忙しいらしいのに、レンのために料理をする那月は楽しそうで、なんだか少し胸があったかくなった。



なぁ、レン。お前は知らないかもしれないけど、お前が思っている以上にみんなお前のことが好きだと思うぞ。それはお前がいつでも笑顔を浮かべているからじゃない、いつでもみんなに優しいからとかそれだけじゃない。お前がお前だから、神宮寺レンだから、こんなにお前のことが好きなんだよ。俺だって、そうだ。誰にも負けないと思えるくらいに、お前のことが好きなんだよ。だからそんなに寂しい顔で笑わないでほしい。いつかお前は言ってたよな、「笑顔は癖みたいなものなんだよね」って、楽しくもないのに笑うのは癖なんだって。俺がお前のそばにいたら、そんな不自然な顔絶対にさせない。心の底から笑ったり、怒ったり、泣いたりして、いつかお前がもっと違う意味で「笑顔は癖みたいなものだ」って言えるようにしてやりたいと思うんだ。

だから、この思いがどうかお前に届きますように。そう願いながら、俺はレンを見つめたのだった。



(大丈夫、こんなにも、お前は愛されているよ)



* * *

総受け……大好きなのですが、初書きだったので、とっても難産でした……!しかも(また)勝手に翔レン翔風味にしてしまいましたw本当は春ちゃん視点にしてみようかとも思ったのですが、どう頑張っても春ちゃんがふじょしになってしまうので諦めたのでした。代わりに翔ちゃんに語っていただきました。
今回は神宮寺さんに「笑顔は癖みたいなもの」と言ってほしくて書きました。でもあまりその台詞が生かされていませんねwうーん、不思議だね!←
20111028



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