愛の病
*付き合ってる音レン。ヤンデレ気味音也注意。フリリクくださったゆうさんに捧げます。
明日君がいなくなるかもしれないと思った。このまま君が心変わりして、簡単に俺の前から消えてしまうようなそんな気がした。でも、君を繋ぎとめておくための方法が、俺にはこんなことくらいしか見つからなかったんだ。
「イッ、キ……痛い、よ……」
俺はレンの髪を、一房掴んだ。掴んだというよりは、ギリギリと引っ張った。ベッドに座っているレンがとても痛そうに顔を歪めたけれど、それは見ないフリをしたよ。あぁ、俺の部屋の電灯の光を受けてキラキラ煌めくその髪が愛しい。レンの髪はいつもすごくいい匂いがする。俺はその匂いがすごく好きで、その心地良い匂いのもとであるレンの髪も大好きだった。そして、たまにトキヤがいない時に俺の部屋にレンが泊った時に、その髪が俺と同じシャンプーの匂いになるのがもっと好きだった。大好きなレンを、俺の匂いで染める。いつも、俺はみんなのものだよとでも言いたそうに笑顔を振りまくレンが、俺のものになったんだという喜びを覚えて、すごく興奮したんだ。それくらい、俺にとってレンの橙色の髪は特別な存在だった。それなのに、
(裏切られた気分にね、なっちゃったんだ)
今日の放課後、トキヤに用事があって、Sクラスの教室に入ろうとした時に、聞こえてしまったトキヤ、レン、翔の3人の会話。それは俺の嫉妬心に火をつけるには十分すぎるほどの内容だったんだ。
「え、普通同室でもシャンプーは共用しなくね?」
「私と音也はもちろん別ですよ」
「俺たちも最初は別だったんだけどね。あいつの髪があまりにもサラサラなもんだから、シャンプーは何使ってるのか聞いたら、お前も使っていいぞとか言われて。それからずっと一緒だよ」
「なんつーか……レンと聖川って実は仲良かったりするよな」
ただの何気ない会話だった。きっと、俺と同じようにトキヤと翔もレンの髪は綺麗だと思ってて、それでシャンプーの話になったんだよね。ただの多愛もない世間話。でもそれは俺の心に深く深く突き刺さった。苦しくて、でも抜けないほどに深く。あんなに好きだったレンの髪の匂い。そしてそれを、俺の匂いで染めたことによる優越感。それは全部全部ニセモノで、レンの髪はとうの昔にマサによって染め上げられていたんだね。君は、マサのものだったんだ、ね。
「ねぇ、レン、洗おうよ」
「何を……ちょ、イッキ引っ張らないでよ、本当に痛い」
掴みあげていたレンの髪を思い切り引っ張る。本当に痛いのだろう、少し涙目になりながら、レンは大人しく俺についてきた。(あ、なんかペットみたい、可愛い)そのまま無理やり風呂場に連れて行って、制服のままのレンの頭に、シャワーで冷水をかけてやった。もちろんレンは抵抗したけれど、掴んだままだった髪を引くとすぐに大人しくなった。ずぶ濡れになったレンってすごく綺麗。怒ったような、困ったようなそんな顔で見上げられると、それだけでゾクゾクする。しばらくするとレンの身体が小刻みに震えだして、寒いのかな、と思った。そりゃあ寒いか、もう11月だもんね。このままだと、風邪ひいちゃうね。いっそのこと風邪をひかせてやろうかと思った。そうしたら、看病をするって名目で俺の部屋にレンを連れて来てさ、ずーっとずーっといっしょにいてあげるのに。マサのいる部屋になんて戻らなくてすむよ、俺の匂いのするベッドで寝て、そしてそのまま全て俺のものになってしまえばいいんだよ。
「イッキ、さむ、い」
そのまま、俺はレンをギュッと抱きしめた。多分痛いと思う、それくらい強く抱きしめた。俺が持ってたシャワーは床に落ちて、水は飛び散って、俺までビチャビチャ。でもそんなの関係ないよね。そうだ、このまま2人で水を浴び続けて、溶けてひとつになれたりしないかな。そうしたらいつもいっしょで、くだらない嫉妬をすることもない、君はどこへも行かないし、飽きるくらいいっしょだよ。
「ねぇ、レン、ここにいてよ、ね?」
明日君がいなくなるかもしれないと思った。このまま君が心変わりして、簡単に俺の前から消えてしまうようなそんな気がした。でも、君を繋ぎとめておくための方法が、俺にはこんなことくらいしか見つからなかったんだ。
(好きすぎるんですが、これって病気ですか?)
* * *
ヤンデレ音也な音レンでGO!がテーマでしたw攻めがヤンデレなのは割と好きでよく読むのですが、自分で書くとなると難しいですねー……。というわけで、ヤンデレ初心者なのでソフトヤンデレになってしまいました。
神宮寺さんはこれくらいのヤンデレなら全然許しそうなイメージです。むしろ俺って愛されてるなぁとか実感してそう、愛に飢えてる子だから←
最後の一文は「確かに恋だった」様からお借りしました。
20111027
back