保護者です


*トキヤ視点のレン翔レンです。会話文多め。










ある日の昼休み、早乙女学園Sクラス。その様子を、私、一ノ瀬トキヤが少しだけお伝え致します。

「レン髪伸びたなー。それ邪魔じゃねぇの?」

そう言葉を発したのは、来栖翔。Sクラスのクラスメイトです。授業中でもいつでも被っているハットと、金色に眩しく光る髪を留めているヘアピンがトレードマークの少年。あと、本人に言えば確実に怒られるとは思いますが、小さな身長で何にでも一生懸命なのが特徴です。(ちなみに、可愛いと言われると子犬のようにキャンキャン噛みつきます)

「そうだね、そういえば少し暑いかもしれない。そろそろ整えた方がいいかな」

答えながら橙色の髪を少しつまんで見せるのは神宮寺レン。同じくSクラスの生徒で、よく目立つ整った顔立ちのせいか、いつも女性に囲まれています。とても綺麗な、モデルのような体型をしていますが、特に体系維持の為に気を付けていることはないんだとか。(羨ましいかぎりです)
2人とも私の友人なのですが、今日は私はどうしても昼中に読んでしまいたい本があるため、2人とは少し離れた自分の席についているのです。翔は購買で買ったパンと牛乳、レンはおそらく女性からの差し入れと思われるお弁当を、向かい合って食べているようで。

「髪、結ってやろうか?」
「うん、お願い。というか、オチビちゃんできるの?」

バーカ、俺様を誰だと思ってんだよ、といつもの調子で翔が返す。ガタン、と翔が席を立つ音が聞こえてきた。

「うわっ、何これ、お前髪サラッサラじゃん!」
「そう?特別なことは何もしてないけれど」
「サラサラツヤツヤだぞ!手入れの行きとどいた猫の毛並みみてぇ。こんなに長いのに枝毛もねぇし」

はいできた、という翔の声と同時に、レンが関心したような声をあげる。私も本から顔をあげてレンを見やると、いつもは肩口まである長い髪が綺麗に1つにまとめられていた。クラス中の視線が一瞬レンに集まる。いつもは見ることのできないうなじがやけに扇情的で、男性も女性も、レンを見つめてしまう。視線の的となっているレンは、そんなことには気が付いていないのか、はたまた慣れてしまっているのか。

「あれ、オチビちゃん今日はマニキュアぬってないんだ」
「ん?あぁ、昨日剥げちまって、そういやぬるの忘れてたな」

翔はいつも手の爪に黒いマニキュアをつけている。自分でやっているのだというそれはいつも丁寧に色が付けられていて、感心するのです。両の手を顔の前にかざす翔の仕草はとても愛らしくて、今度はそちらに視線がいく。キョロキョロと忙しなく動く空色の瞳はまるで小動物のようで、見る人を魅了するのです。

「ねぇ、今持ってる?俺、1回やってみたかったんだよね」
「持ってるけど……絶対失敗すんなよ!除光液ないんだから!」

髪を結ったあとは爪いじりですか……まるで女性同士の会話のようですね、とふと思う。大きくてぱっちりとした瞳が可愛らしい翔と、まるで作りもののように整った端正な顔をしているレンがそういうことをしていると、まるで人形が動いて話しているようだとも思う。それは何だか見てはいけない、触れてはならない秘密の花園のような空間で、私は目を逸らすかのように手元の本に視線を戻そうとした。……けれど、その行為に失敗した。

「オチビちゃんの爪、ちっちゃくて可愛いね。手も白くてふにふにしてるし」
「可愛い言うな!黙ってないとやらせてやんねーぞ、レン」
「わ、しかも近くで見るとホントに女の子みたいだねぇ。どうしてリップもぬってないのにそんなに唇プルプルなの?」
「っレン……顔が近いんだよ!集中してやれ!」

2人の会話が気になって、上手く本を読むことができない。先ほどから、何度も何度も同じ行を読んでいるのに、一向に内容が頭に入ってこないのです。その間にもレンの行動はエスカレートしていったようで、2人の距離は先刻よりも大分縮まっているように見える。

「オチビちゃんって、本当に天使みたいだよね。よく言われない?肌真っ白だし、可愛いし、羽とかすごく似合いそう」
「か、かわっ……!そういうレンは悪魔みたいだよな!色気だだ漏れで誰彼かまわず惹きつけて、んで人の精神蝕んでく類のやつ。いつかお前を殺して俺も死ぬ!的なのに巻き込まれそう」
「あのねぇ、人を色魔みたいに言わないでくれる?それに、一緒に死ぬならオチビちゃんみたいな可愛い子がいいな」

だから可愛いって言うな!と叫ぶ翔の様子などお構いなしに、レンが翔の首に手を回して抱きつこうとする。私は1つ、小さなため息を吐きだしてから本を閉じ、席から静かに立ちあがった。(まったく、落ち着いて本も読めやしない)

「あー、もうレン暑い!てか、どこ触ってんだよ!くすぐったい!」
「本当にオチビちゃんは抱き心地がいいねー」

すでに組んず解れつの大騒ぎとなっている2人の後ろに回って、持っていた本でレンの頭を、もう片方の手で翔の肩をそれぞれ少し強めに叩く。(あれ、本読み終わった?なんて呑気に聞いてくるのは無視です、無視)本当にあなたたちだったら……



(もう少し自覚を持ってくれないと困ります)

(天使と悪魔の保護者は本当に骨が折れる仕事なのです)





* * *

翔ちゃんって天使みたいに可愛くて、レンちゃんって悪魔みたいに色気あるよなー、と考えてたらこんなのが書けた。レンと翔がキャッキャしてるだけという、私しか得をしなさそうなものですねww←
今回はレンと翔の掛け合いを書きたかったので、会話文多めにしてみました。こんな感じで、レン様が翔ちゃんに構って攻撃をして、それに翔ちゃんがキャンキャン吠えて、結局2人して一ノ瀬さんにうるさいですよって叱られてる、そんなSクラスの関係が好きです。同志様求めてます←
20111013

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