下心ですが、かまいませんか?


*付き合ってない龍レン。リューヤさんが硬派でも誠実でもないので、そんなリューヤさんが許せない方は注意してください。








「若い頃は無茶苦茶ばかりやった」、なんて言葉が出てくる時点で、自分が少しずつ年を重ねてきたことを実感する。俳優として、男として、枯れているつもりなど毛頭ないが、それでも自分自身から若さというものがもう感じられなくなっていることはとっくに気が付いている。
思考の発端に戻ろう。そう、俺だって若い頃は無茶なことも相当やった。今でこそ硬派な俳優として名が通っていて、痛い火傷を負わないようにする落ち着きくらいは持ち合わせている。でも、デビューしたての頃は芸能界の何たるかなんて、わかった顔して本当は全然理解できていない若造で、勢いにまかせて人気女優と寝てしまったこともあったし、ファンの子を喰ったこともあった。今から考えればとんでもなく浅はかな行動だが、人気も出てきてオフの日もあってないようなものだったから、余りある若い力を発散できるような場所もなかったのだ、と少しだけ自分で自分に弁解してみる。今考えれば、恐らくあの頃の自分は相当な強い力で事務所に守られていたのだろうな、と思う。あんなに無茶苦茶やっていたのだ、スキャンダルにならなかったということは、社長はきっとそれなりの労力を費やして俺の馬鹿に目を瞑っていてくれたのだろう。それを思うと、昨今の社長のハチャメチャぶりに声をあげて非難することもできない。こうやって社長のフォローに追われる生活を送っているのも、結局は自業自得なところもあるのだが、まあそれは置いておくことにする。

なぜこんな、恥としかいいようのない若気の至りを今さら思い返したのかと言えば、この年になって、こんな汚れきった身で、硬派とかいう冠で呼ばれている分際で、どうやら自分が恋をしてしまっていることに気が付いてしまったからだ。まったく、情けない。しかもその恋というものが、どう考えても下心が激しく主張している類の恋だからだ。つまりは、下半身に直結した恋とでも言えばいいのか。本当に、年甲斐がなさすぎて自分でも呆れる。呆れるついでにもう一つ言えば、しかもその対象は男で、年下で、教え子である。(1つどころじゃ済まなかった)

「俺はね、多分リューヤさんが考えているよりも、ずっとずっとリューヤさんのことが好きだよ」
「そうか」
「ねえ、俺はいったいどうしたらリューヤさんに、この気持ちを全部わかってもらえるのかわからなくて、すごく困っているんだ」

俺も、お前の毎日毎日飽きない付き合って攻撃に困っているよ、と言いたいが言えない。こうやって放課後に指導室に押し掛けてくる神宮寺を、何度自分の欲望にまかせて押し倒してやろうと思ったかしれない。今まで男にこんな感情を抱いたことは一度もなかった。若い頃はなるべく女性らしい身体をした人により欲情したし、触れれば柔らかい身体ばかりを抱いた。「困っているんだ」という言葉の通りに、目尻を垂らして困惑したような笑みを浮かべる神宮寺レンは、お世辞にも女性らしい身体をしているとは言えない。濃厚な蜂蜜のような橙の髪に、つくりものと見紛うくらいの端正な顔立ちは魅力的だけれど、肩幅は広いし、身長だって高い、丸みを帯びた膨らみもなければ、両手で包みこむことも(恐らく)できない。それなのに、蠱惑的に微笑う薄い唇とか、細い髪からたまにのぞく形の良い耳とか、無骨さと繊細を併せ持つ矛盾を孕んだ指先とか、そういうものにいちいち性的な衝動を突き動かされる。
喰ってしまえばいいのかもしれない。もしかしたら今まで気が付かなかっただけで自分はバイだったのかもしれないし、芸能界ではそういう性癖をもった人間を少なからず見てきた。むしろ男相手の方が面倒もないのかもしれない。ただ、直情的な衝動だけで組敷くことができないのは、神宮寺が自分に向ける感情が途方に暮れるほど純粋なもののように感じられるから。

「お前は俺のことを何も知らないだろ?」
「……でも、本当のリューヤさんが俺の思っていたリューヤさんと違ったとしても、俺はまた本当のリューヤさんを好きになるよ」

この澄んだ甘い視線に、答えてしまうのは時間の問題なのだろうなと思った。今だって、問いかけたくて仕方がない自分がいるのだから。



(下心ですが、かまいませんか?)



* * *

硬派に見せかけて実は女遊び激しかったリューヤさんとかどうよ。という思考のもとに生まれた龍レンでした。リューヤさんは硬派で一途で誠実じゃなきゃイヤ!っていうお嬢様方、すいませんでした。若い頃にこういう一面があってもいいんじゃないか?と思ったんです。まあ、こんな据え膳状態の神宮寺をすぐ喰わない時点で、このリューヤさん誠実だよね。
タイトルは「確かに恋だった」様からお借りしました。
20150114
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