頬濡らす


*レン誕なのに暗めな小ネタ。元拍手お礼文です。










いつだって、万人の目線を奪う蠱惑的な笑みを浮かべるレンが、やりきれないような顔をして泣きそうに目尻を下げるのを、見つめることしかできなかった。たった一言、今日、2月14日の仕事をすべて終えたあとに、「誕生日おめでとう」と伝えただけだというのに。

「……あり、がとう」

レンの瞳にたまった滴を見て、この水滴が落ちる前に抱きしめてやらなくてはという思いが急に頭に浮かんできた。自分の身体はレンに比べたら小さくて、彼の身体すべてを包み込んでやれないことは、いつだってコンプレックスだ。抱きしめているというよりは、抱きついている格好にどうしても近くなってしまう。それでも、こういう時のレンはいつもよりもずっと小さく思える。自分よりも2つも年上なことを忘れてしまうくらいに。

一体何が、彼の涙腺を刺激したのかはわからない。自分といるとき、レンは稀に情緒不安定になる。いつも上手いこと回る口は、ほとんど言葉を紡がなくなる。俺が感じることができるのは、彼の言い知れぬ不安と、無言で助けを求めているという事実だけだ。
何がレンを揺らしているのかはわからない。だから俺にできることはただ、レンに伝えたい思いを素直に言葉にすることだけだ。それが彼をもっと泣かせることになったとしても。

「レン、誕生日、おめでとう」



(俺がいなくても笑える君は、俺がいないときっと泣けない)



* * *

幸せな話を書くと意気込んでいたのはどこにいったのか、自分で自分を問い詰めたい。甘くはないけど、幸せな話だと言い張ってみる。神宮寺誕生日おめでとう!
20140213
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