無責任な愛情


*元拍手お礼文です。龍レンでアダルティな感じを目指して撃沈。










うまく息ができない、ということにぼんやりと気がついた。苦しい思いをしていることに、ここまで気がつかない自分が不思議だったけれど、きっと快感は時に苦しみを上回るのだと納得した。汗なのか涙なのかよくわからないものでぼやけた視界には、眉間に皺をよせてギュッと目をつむるリューヤさんの顔が映っていた。手の届く距離に彼がいて、俺の上で腰を振っているという事実に身震いして、また快感が苦しみを越えた。脳髄の奥の奥に津波のように押し寄せる快感に、伸ばしたいと思った手は負けてしまった。身体を繋げているときにしか、素直に彼に手を伸ばすことはできないのに、もったいない。そんなことを考えながら、ゆるやかに意識は途切れていった。

意識を取り戻したとき、彼はとっくに身支度を整えていて、今まさに出かけようとしていた。指一本動かすのも億劫な状態であったが、自分自身の状態を確認すると、身体は清められているようだった。それでも、目の前でフォーマルなスーツに身を包んだ彼と、何も纏わずに寝ている自分を見比べると、自分はひどく滑稽に思えた。

「いってらっしゃい」

長いこと啼き続けたせいか、自分が思っていたよりもずっと細く、か弱い声になった。そんな頼りない俺の声に気付いた彼は、シーツに煩雑に散らばる俺の髪を一房とって、口づける。手を伸ばしたいけれど、やっぱり無理であった。身体に力が入らないからなんて、そんなもっともらしい言い訳はただの誤魔化しで、結局は何の意味もない恥じらいが邪魔をしているだけだ。

「愛してる」

「いってきます」の代わりにそれだけ告げて、いつも彼は俺を置いていく。「愛してる」だなんて、目に見える証拠なんて一つもくれないくせに、(否、くれることなんてできないくせに)それでも彼はいとも簡単にその言葉を口にする。「愛してる」。何て無責任な言葉なのだろう。いつ俺から離れていくかわからないくせに。愛してくれているのは俺の身体だけなのかもしれないのに。



(周りから見ればどんなに無責任に思える言葉であっても、)
(それを信じたいのは、他でもない自分なんだ)



* * *

拍手コメントで「ちょびっとアダルティな龍レンないですか?」とのコメントをいただき、滾って書いてしまった。書き終わって気付きましたが、私のアダルティは所詮この程度です。かたじけない。生々しい出来事を生々しくなく描写できるスキルが欲しい。
20140213
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