短編 | ナノ

「暴力振るわないと女をヤレない奴って女を昔の家電と勘違いしてんじゃないのって思うわけ。殴っていうこときかせるってそういうことじゃない?」

「それ俺に言ってるの?」

「別に?」

ベッドの上でけらけらと乾いた笑いをする  の白い躯には、青い痣や赤い痣や黒く染み込んだ痣がいくつも散らばっている。まだら模様のその躯を俺はすこしの罪悪感と独占欲をそれなりに満たす支配感を抱きながらいつも眺めている。

「気にくわないの?」

「幸村のことは好きだよ。とても。かわいくて大好き」

「へえ?」

「絶対うそだって思ったでしょ、うそじゃないよ。幸村かわいすぎてわたし死んじゃいそうだもん」

  は決して語彙力が乏しいというわけではないけれど、かわいいは濫用も濫用のいいところで使われている。  のかわいいには意味がありすぎてどの意味のかわいいなのか判断するのが難しい。今  が言ったかわいいだって、よくない意味で使われているのは分かっても、果たしてそれがどのよくない意味を指すのか俺には分からないし、  は決して教えない。

「嫌ならおとなしくしていればいいのに。本当にお前ってMだよね」

「おとなしくしてても幸村は、わたしに暴力を振るうよね。でもまあわたし、幸村がわたしに暴力振るうの、大好きだし」

大好きだし。嘲るように笑えば  もふふふと笑う。

「俺以外の他に、誰に暴力を振るわれてるんだい」

「嫉妬してる?」

「全然」

「じゃあ秘密」

秘密?ほんとは秘密なんてなくて、俺以外に体を許してもいないのに。そもそもそんなことしてたら俺はもっと  のことを痛めつけている。他の奴に見せられないくらいに。女の膣は受け入れた男を覚えるってことを  は知らないし、知ることもないのだろう。

「案外かわいい性格してるんだね。俺のことがそんなに好きなの?」

「うん」

  はどうして好きでもない俺に組み敷かれることを選ぶのだろう。最終的にそうさせているのは俺かもしれないけれど、一応は逃げる選択肢だって与えている。頭の悪くない  が俺と二人にならないように気を付けるのはそこまで難しくはないと思う。  は抵抗する素振りを見せながら、その実最初から抵抗する気なんてなくて、俺に暴力を振るわれながら犯されることを自ら進んで選択している。俺はそんな  の態度から、  は見下す対象が欲しいのだろうと推測している。  は自己肯定感が著しく低くて、常に誰かを下に見ていなくては済まない質だから。そんなものの為に股を開く馬鹿な女を好きになった俺も馬鹿なのかもしれない。でも俺は、  が好きなのか、白に映える俺の付けた痣が好きなのか、今じゃもう分からなくなってるんだけど。




20141014 膣は正確な情報なのか知りませんけど小耳に挟んだはなし。
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