短編 | ナノ

「あんたやっぱピアス開け過ぎやろそれ」

隣で自分の腕を枕にして寝転ぶ光の耳には左に三つ、右に二つのピアスが光る。中二から五つもよー開けたなぁと言えば中二がいっちゃん楽な時期なんで、と言う。私の学年で一番多くピアスを付けている子でも三つ止まりやったはずなのに。そんなんやから上から目ぇ付けられんねん。

「先輩も毎日毎日、厚塗りし過ぎや思いますわ。そんなメイクしたって何も変わらんでしょ」
「え、何?むしろスッピンの方が可愛いって?やーもう、照れるわぁ」

光はちらりと黒目だけ動かして私を見ると呆れたように溜め息を吐いた。

「先輩ってほんま幸せですね」
「うふふふふ」
「……」

昼休みでもない授業の合間の休み時間でもない、つまりはサボりの三時間目の屋上。自由人千歳がいない代わりになんとツンデレ少年光がいた。私にとってはその方がよかったんやけど。むしろこのタイミングでサボりに来た私天才とか思ったんやけど(光は中々真面目に授業を受けてるらしいからかサボってるのを見たのは今日初めてなのだ)。どうやらテニスの天才光君はそう思わなかったらしい。

「俺、寝る為にここに来たんすわ。せやから騒がんとって下さいね」と言うや否や私に背を向けた。

「えー、何でよつまらん。折角やねんから話そうや。あ、私と光の今後について語」「寝るんで」

光は私の言葉を遮って私を睨むように見た。どこのヤンキーやねん。めっちゃガラ悪いで。余計なお世話や。光はそれっきり何も言わなくなってしまった。なんや、ほんまに寝るつもりなん。つまらん。千歳の方がまだよーけ喋ってくれるわ。まあ千歳は話が緩やかにぶっ飛んでることが多いけど。
私は特別することもなく、眠る気にもなれず、空を仰いだ。抜けるように青い空。全国ん時も、こんな感じの空だった。だからか、と思った。いつもなら殆どの確率でここに居る千歳が今日は居ない理由。千歳は分かっていたのだ。

「お疲れ様」
「……おん」

頭をぐしゃぐしゃに撫でても珍しく光は悪態を付かなかった。




20120405 メルボログ

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