短編 | ナノ




春うらら。そんな表現がぴったりな今日の気候。ほのぼのした日差しが全身に降り注いで俺の心もほのぼのとしたものになる。うふふふふ、あはははは、なんて、もし赤也がここにいたらやりそうなくらいほのぼのとした天気だ。まぁそんなことしたら俺マジで引くけど。
普段あまり見ない沢山の緑に囲まれて何だか俺の煩悩が浄化されていく気がする。あ、俺今なら悟り開けっかも。なぁ仁王。……仁王?そう言えば少し前から奴の返事が無い。不思議に思って振り返ると当然後ろにいると思っていた仁王の姿がそこに無いことに気が付いた。は?何アイツどこ行ったの?え、てかいつからだよ。返事無くても俺今まで喋ってたんですけど。何なのかなりハズいことやってたわけ。後方に目を遣るとこの場所とは明らかにそぐわない色を歩くべき道から外れた所で見つけた。えええ、アイツ何してんの。何、行き倒れ?丁度キツい階段を登り切った辺りの所だから皆アイツのことを気に掛ける様子もない(見ても一瞬ちら見だけ)。……。普段の俺ならここで仁王のことを呼ぶだけだっただろう。だけど今の俺には倒れている奴を見捨てることに罪悪感がある。しょうがねぇ、キングジャンボプリンパフェで救ってやっか。俺は来た道を戻った。俺って何て優しい奴。


「おーい、大丈夫かー」

仁王の前にしゃがみ込んで呼び掛ける。仁王は今にも死にそうな雰囲気で俺の顔を見た。おいおい、一番ハードなテニス部の奴が何こんなとこでヘタれてんだよ。

「おら、行くぞ」
「こん学校は何をさせようっちゅんじゃ」
「この澄んだ空気を吸ってみろぃ、心洗われるぜ」
「ブンちゃんキモいナリ」

普段ならここで一発殴っているが、今の俺はそんな仁王を慈しんで見てやることが出来る。ふっと口角を上げて手を差し伸べた俺を仁王は益々気持ち悪そうな物を見るような目をして見た。

「……ブンちゃん、心洗われとうちゅうより、背後に悪魔が見えようよ」
「あ?何言ってんだよ。寧ろ天使だろぃ?」
「いや……ゴッドデビルナリ」
「何その神か悪魔か分かんねえの」
「あれ?ブン太どうしたの、屍見つけたの?」

……あ、ゴッドデビルの意味分かったかも。


遠足 パ ニッ ク


背後からの声に振り向くとやっぱり、幸村くんがそこに居た。

「フフ、そんなのに気を取られて置いて行かれちゃ駄目だよ。それよりこの辺りは空気も良いし体を動かすには丁度いいよね。それに山登りは普段使わない筋肉を使うし体力を付けるのにもいい、そうだ、今度の遠征の時は山登りも予定に組み入れようか」

そのつもりで後の距離頑張りなよ。
ニコニコと笑ってそう言った幸村くんは、仁王の小指を明らかに狙って踏んづけて先に進んで行く。妙な声を上げて遂に本当ににくたばった仁王を一瞥してから、俺も幸村くんの後を追い掛けた。




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20110807
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