短編 | ナノ


今日は一気に夏がやってきた日だった。ここ数日涼しい日が続いたから余計にそう感じたのかもしれない。いきなり太陽がカンカン照りになり蝉が喧しく鳴き始め、止めどなく流れ落ちる汗は俺のユニフォームをぐっしょりと濡らした。

部室のドアを開けるとそこからむわり、と独特な熱気と制汗剤の臭いが俺に覆い被さってきた。見るとブンちゃんと赤也がシューシューしている。中に入ると恐らく俺はそれらに呑まれるだろう。だが俺もこの濡れに濡れてもはや不快感しか与えないユニフォームを早く脱ぎ捨てたい。しかし外で脱ぐと真田が煩い。この真夏の様にうだる暑さの中、暑苦しく怒声と鉄拳を放つ真田に捕まりとうはない。

仕方なしに部室に入るとむんむんとした夏恒例の嫌な空気が立ち込めていた。臭い。汗臭さ3割、制汗剤の臭い7割がこの空気を征していると思う。人工の臭いに殆ど埋め尽くされとる。ここに長い時間いたら確実に頭をやられるだろう。それなのにブンちゃんと赤也はまだシューシューシューシュー。シューシューしすぎじゃ、女子か。おまん等の鼻は鼻の役割果たしてなかろ。

「つーかお前も人のこと言う前にその汗臭さどうにかしろ」
「俺の汗は天才的じゃき無臭ナリ」
「人のんパクんな黒子」
「仁王先輩、汗臭いっス」
「だから無臭じゃ言うとるやろ」
「とか言ってお前何出してんの」
「シーブリーズ」
「やっぱ臭い気にしてるじゃないスか」
「このヒリヒリ感がたまらんナリ」
「Mか」
「Sぜよ」
「それぜってぇM」
「赤也もやってみんしゃい」
「俺は8×4一本なんで」
「何のアピールだよ」
「一途な男、切原赤也っス」
「ブンちゃんも使ってみ」
「いい、それ痛ぇもん。あーそのちんたらちんたら塗んのムカつく」
「うっわ!何するんじゃ!」
「テメーもグリーンアップルに染めてやるぜ!」
「俺の台詞っスよ、それ」
「染めでよか!」






「お前達、学校で爆発騒ぎは起こしてくれるな」

部室の入り口。溜め息を付く参謀の後ろで「ねぇ、やっちゃう?やっちゃおうよ」と幸村がニコニコしながらライターを持っているのが目に入った。




20100718
この後赤也はブン太に消臭力を買いに走らされる。消臭力なんかで効くのかどうか気になる仁王。結局真田に怒声を飛ばされる3馬鹿。でも幸村の微笑みである意味涼しい。


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テーマ「人外ファンタジー」
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