「知ってるかもしらんけど俺な、お嬢ちゃんのことが好きやねん。せやから付き合うて欲しい」
ひゃー!
携帯から伝わってくる低音の何とも色っぽい囁きに軽く眩暈を覚えながら、私は二つ返事で肯いていた。
「よ、よよよろこんで!」
電話の彼はそない慌てんでええやろ、と短く笑った後に「ありがとうな」
「お嬢ちゃんのこと大事にするさかい。ほんま今直ぐにでも会いに行って抱き締めたいわ」
あああ、何!?この低く掠れたこの声。しかも方言って、大阪弁って何?何なの?喋る早さも早過ぎず遅過ぎず、丁度いい感じで喋ってくれるから私の中でその響きが心地よくじんわり広がる。彼と電話する度にぞくぞく鳥肌が立つ。まさに耳レイプ。まさか一般人でこんないい声する人がいるなんて思わなかった。それに台詞も何か物凄く甘いこと囁いてくれるし、もう何だか乙ゲーから三次元に出て来た人っぽい。
「わ、私なんかでいいのかな?」
「俺はお嬢ちゃんがええねん」
うわわわわ。この「ええねん」の響き!さっきから鳥肌が収まらない。恐るべし吐息。お前本当に中三ですか。同い年ですか!
「お嬢ちゃんも俺でええんか?」
「も、勿論!あなたみたいな素敵な(声した)人そういないし!」
「何や、照れること言うなぁ自分」
「だって本当のことだし!」
とか言って、私は彼の顔薄ぼんやりとしか覚えてないんだけど。まぁ今はやりのネット恋愛の微リアル版ってことで。始まりはちゃんと会っての始まりだからね。大丈夫、全く問題は無い。それに確かまぁまぁイケメンだったはずだ。
「……もうこんな時間かいな。そろそろ寝なアカンな」
「え、まだ一時だよ」
「アカン!夜更かしは美容の敵や。お嬢ちゃんのそのすべすべの肌が荒れてもうたらどないすんねん」
「大丈夫だよこのくらい」
それでも彼は「アカン、もう寝なアカンで」と言って聞かない。仕方ないので折れることにした。私としてはもう暫くこの余韻に浸っていたいのだけれど。まぁ声聴こうと思えばまたいつでも聴けるしいっか。
「お嬢ちゃん、好きやで。おやすみ」
「おおおおやすみ!」
とにかく吐息ボイス+方言最高すぎる。
20110131