中田さんと山口さんと別れて高田さんに連れられてわたしは103と書かれた部屋の前まで来た、高田さんがドアを数回蹴った、すると数秒でドアがあいてこの呼び方はマイスウィートダーリン高田さんッスねと言いながら女の人がでてきた、確か名前は。

「結城」

そう、結城さんだ。

「高田さんが私の名前を呼んでくれるなんて…ハアハア」
「気持ち悪いから息せずに聞け、そして文句を言うな、話すな、従え」

結城さんはこくりと頷いた。
すると高田さんが話し出す。

「昼間この餓鬼の面倒みろ、夕方順番の奴が迎えにきて朝食喰わせてまたお前のとこへ戻す、そういうことだ、またな」

そう言ってドアを閉めた、ガン、鈍い音がしたけど高田さんは気にせずわたしの手を引っ張って隣りの部屋へはいった。
部屋に入ると手を乱暴に離された、引っ張られた手が痛い。

「餓鬼はさっさと喰って寝ろ」

そう言って冷蔵庫からケーキみたいなものを出してわたしの前においた、わたしがじいと食べずに見ているとアップルパイだ、と高田さんが言った。

「ぱい?」
「小麦粉とバターを練って、中に林檎の砂糖煮をつめて焼いたやつだ」

よくわからないけど林檎と砂糖のお菓子かな。
ぱくり、一口食べる。

「…おいしい」
「そりゃ当然だ俺が作ったんだからな」
「すごい」

そう言えば高田さんは少し笑った。
高田さんも笑うんだ、少し驚いた。

「笑ったら優しい顔してる」
「餓鬼は黙って喰って寝ろ」

そう言って高田さんはまた難しい顔してどこかへ行ってしまった、しばらくしてシャワーの音がしたからお風呂に行ったんだと思う。
ぱくり、アップルパイをまた一口食べた。

「優しい味」

高田さんは本当はいい人なのかもしれない。