わたしはてっきり中田さんの部屋に住むと思っていた、庭での夕食が終わって帰る時中田さんについていこうとしたらわたしの頭をずっと撫でていた山口さんに呼び止められた。

「春希ちゃんはこっち、僕以外はみんな明日仕事とか用事があるから、今日は僕の部屋だよ」

今日はということは毎日違う人の部屋なのだろうか、不安になってきた、もしかして、あの、わたしのことを嫌っていた高田さんの部屋にもお世話になるのだろうか、怖い。
山口さんに連れられて部屋に入ると可愛いぬいぐるみがたくさんあった。
とても大きいものもあれば小さなものもあった。

「春希ちゃんは何歳なの?」

かちゃかちゃと洗い物をしながら山口さんは言った、わたしは座って山口さんの背中をじいと見ていた。

「5です」
「そうなの?しっかりしてるね」
「ありがとう、ございます」

洗い物が終わると山口さんは紅茶が飲めるか聞いてきた、飲めると思いますと答えたついでにわたしはぬいぐるみに触っていいか聞いた。

「いいよ、優しくね」

そっと、犬のぬいぐるみの頭を撫でる、少し撫でたら次は隣りのくまのぬいぐるみの頭を撫でた。
可愛いですね、そう言えば山口さんはそうだよね、と机に紅茶をおいた。
紅茶はじめて飲みます、そう言って口をつける。
少し熱くて舌がちょっと痛い。

「おいひいれす」
「あ、もしかして舌火傷しちゃった?」
「ふみまへん」
「今氷あげるから待ってて」
「ふあい」

山口さんから氷を受け取って口に放り込む、氷がわたしの舌の上で水になるのがわかった。
じゃあ布団を敷いておくからお風呂にはいっておいで、そう言って山口さんはわたしにバスタオルと大家さんから支給されたという着替えを手渡した。
こくりと頷いてお風呂場に行く、よーし敷くぞと山口さんが叫んでいた。
お風呂からあがると布団が二人分敷いてあった。
部屋がそんなに大きくないので二人分の布団は少し重なっていた。
山口さんはお風呂からあがってきたわたしを見て少し着替え大きかったね、と笑った。

「はい、」
「まあすぐ小さくなると思うよ」

山口さんはわたしに寝るように言った、わたしは小さい方の布団に横になる、山口さんが優しく布団をかけてくれた。

「おやすみなさい」
「はい、おやすみ」

電気が消えたのでわたしは目を閉じた。
かちかち、音がするので目を開けると山口さんが机にむかっていた。

「勉強、ですか?」
「あ、うん、春希ちゃんは寝なきゃだめだよ」
「はい」

わたしは目を閉じて、眠りについた。