わたしのそばにいて、小さな小さなわたしの願いはわたしの口からでることもなく崩れた。
曽良は明日行くと言った、そう、わたしの口からでたのはやけに素気ない言葉だった。
ああ、なんてかわいくない女なんだろう、わたしは自嘲気味に笑った。
曽良はわたしの方は見ないで、空を見ていた。
太陽がぎらぎらと輝いていて、雲ひとつないこの空は、わたしの心とは正反対だと思った。
曽良は、静かにわたしを見つめた、曽良とわたしの視線が絡み合う、わたしは目を逸した。
曽良、その名前を口にした時、曽良は一緒に行きませんか、と言った。

「え」

にこり、いつもと違って優しく微笑む曽良にわたしはどうしていいかわからなくなった。
ただ、今の言葉が嘘でなければいいと思った、そして行きたいと言った。

「曽良のそばにいたい」

曽良は一瞬驚いたように目を少し開けて、すぐに笑顔になった。
そして曽良の優しくて大きな手がわたしの頭にのびてきて、そっと触れた。

「ずっと一緒にいましょう」

そう言った曽良の顔は、涙で見えなかった。
だけどきっと今までで一番優しい顔をしてると思った。