「ねぇばかなの?死ぬの?」
「風邪なの、死なない、多分」

携帯から聞こえた幼馴染みの声に安心するのは何故だろう、めちゃくちゃ言われてるのに、何故安心するのだろう。
私はせーいち、と幼馴染みの名前を呼ぶ、幼馴染みはなに、死にそう?と言った。
どんだけ私を殺したいんだせーいち。

「別に殺したいわけじゃないよ」
「えー私言葉にしてないんですけどー怖すぎるんですけどー」
「煩いよ、ちゃんと布団には入ってるの?」

幼馴染みの声は優しかった、私はうん、と小さく返事した、ガチャリ、部屋のドアがあいた、お母さんでも入ってきたのかと思ったら幼馴染みのせーいちが携帯とビニール袋片手に入ってきた、私はびっくりして跳ね起きた。

「な…なななな」
「本当だ、ちゃんと入ってたね、過去形だけど」

せーいちはそう言ってどさりと私のベッドに腰掛けた、そして跳ね起きた私を見て文句があるのかと言ってきたのでないですと答えるとなら寝ろと言われたのでまた横になる。
心臓がばくばくいっている、どうしようせーいちがお見舞いだなんてありえない、頭打ったのかな、やっぱりそうなのかな。
せーいちは失礼なやつだなと言って私にでこぴんした、痛い、そう叫ぶと大袈裟だなと笑った、せーいちの笑った顔はそりゃあもう綺麗で綺麗で私の心臓はばっくばくいった。

「熱あがったんじゃない」

せーいちは私のおでこに手をあてて言った、お前のせいじゃお前の、とは言わずそうかな、と言った。

「なに、俺のせい?」

だからなんで言ってないことがわかるんだせーいちは、私は溜息をついた。
せーいちはそんなにお前俺のこと好きだっけか、と私が食べるためにお母さんがむいてくれたうさぎの林檎を口にした、しゃり、いい音だ。
でも私が食べたかったな、最後の一個だったのに。
そんなこと思ったらせーいちがぐりぐりとうさぎの林檎(半分)を私の口にねじ込んだ。
か、か、間接キスなんじゃないのかこれ、私は顔が真っ赤になるのがわかった、せーいちは小悪魔的な笑顔だった。
私はしゃりしゃりと林檎を食べる、せーいちもしゃりしゃりと音をたてて食べていた。
間接キス、心臓がもたない、本当に何しに来たんだせーいち、そうか私を殺しにきたんだな。

「お前相当俺のこと好きだよな」

間接キスくらいで真っ赤になって、せーいちは笑った。
そうですよ、好きですよ、だけどビニール袋いっぱいに薬やら冷えピタやら飲み物やらを買ってくるせーいちも、相当私のこと好きだよね。
私も笑った。
風邪はどこかの誰かさんのおかげですぐなおりそうだ。