『今までありがとう、日吉』

そう言われてから早3日、あれから先輩を見ていない。
同じクラスの跡部さんに聞いたところ風邪で休んでいるらしい。
なんだか胸がもやもやするので胸に手をおくと跡部さんは恋か、と笑っていたので死んで下さいとだけ言って俺はその場を離れた。

「鳳」
「日吉」

俺に呼ばれて鳳は振り返って不思議そうに俺を見た。

「………」
「なに?」
「先輩の家知ってるか」
「、うんっ」

鳳はムカつく笑顔で返事した。
いつもなら殴っていたけど今日はそんな余裕なかった。
部活が早く終わったので鳳に地図をかいてもらった。
この辺、と書いてある。

「どこにもねぇぞ、あいつ地図アバウトすぎだろ」

ぐだぐだ文句を言いながら近くの家の表札を確認していく、これは違う、これも違う、宍戸?
ぐしゃり地図を握りつぶす。
すぐに携帯を取り出して鳳にかける。

『もしも『おい』
『あ、日吉!ついたの?』
『お前喧嘩売ってるだろ』
『なにが?』
『宍戸さんの家じゃなくて俺は先輩の『あ、先輩の家って宍戸さんの家の隣りですよ』
『は』
『だから『わかった』

電話を切って隣りの家の表札を見る、先輩の名字だ。
俺は先輩の家の前に立つ、すうと息を吸って吐く。
半ば勢いで来たけれど俺は先輩に会ってなにがしたいんだ?
答えがでないまま俺はインターホンを押した。
インターホンを押してもすぐに返事はこなかった、しばらくして、俺が諦めて帰ろうとした時返事があった。

「はい」

インターホンごしにでもわかる、このテンションと声は先輩だ。

「日吉です、先輩ですか」
「、うん」
「話がしたいんですけど」

先輩しばらく黙ってからじゃあ待ってて、と答えた。
しばらくおとなしく待っているとドアが開いてパジャマ姿にマスクをした先輩がでてきてびっくりした。

「本当に、風邪…ひいて」
「あ、うん」

ニッコリ笑う先輩に、言葉がでなくなった。
先輩は上がって、と俺を中に招いた。
俺はただ言われるまま中に入って、言われたように先輩の自室に入って、言われたように椅子に座った。
先輩もベッドに腰掛ける。

「あの、風邪、大丈夫ですか」
「あ、うん」

言葉がうまくでてこない、きっとそれは俺だけじゃないのだろうけど。
俺はすうと息を吸って吐いた。
取りあえず、俺の気持ちだけ、伝えることにしよう。

「先輩」