誰よりもうまく生きているつもりでいた私は、誰よりも生きることがへただったみたいだ。
友達や親や先生やみんなに反抗や意見は全くしないで流されてきた。
そうしたら小学生の頃は行けてた学校もだんだん行くのがつらくなってきて、今日、初めてズル休みした。
ズル休み、心臓がどきどきする、私は家でごろごろしながら一日過ごした。
夕方、ちょうど学校が終わって1時間くらいした時間にインターホンがなった。
「誰だろ」
でてみるとそこには、不機嫌オーラをだしている幼馴染みの征矢がいた。
私はびっくりして一度ドアを閉める、おい、征矢の声がしたのでもう一度ドアをあける。
夢じゃない、そう言えばはあ、と征矢は溜息をひとつついてあがるぞ、と家に入ってきた。
私が何しに来たのか聞けば征矢はさらに不機嫌そうな顔をした。
私何かまずいこと言ったかな、どきどきしているとメールがなかった、征矢は言った。
「え」
「今日休むってメール、なかった」
全然話が見えないんですけど、そう言えば征矢は溜息をついて、大きな声でお前俺に今日休むってメールしなかっただろ、そう言った。
「まあ」
だって、ズル休みだし、何故いちいち征矢にメールしなくちゃいけないんだ。
「どうせズル休みだろ」
「う」
征矢は勘がいいというか、私のことはなんでも知ってるというか、私は諦めてそうだけどなに、悪いかしら、そう言った。
征矢は悪い、そう言った。
そしてさらにメールがなきゃ心配すんだろ、と言った。
心配、びっくりした、征矢の口からこんな言葉がでるなんて。
私が目を丸くすると征矢は少し顔を逸らして心配したんだよ、と言った。
心配、してくれた、征矢が、なんだか鼻がつんとする。
目頭が熱くなる。
だめだ、これは泣いちゃう。
ぽろぽろ涙が溢れてきた、征矢はおい、泣くなよ、そう言ってびっくりしていた、そうだよね、突然泣かれたら困るよね。
私は必死に泣きやもうと目をこする、すると征矢はばか、こすんな、と言って私の手をつかんだ。
そしてタオルをだして、そっと押すように私の涙を拭った。
「せ、」
「無理して喋んなよ」
「う、ん、ごめ」
「いいから、」
そう言って、頭を撫でてくれた、征矢、お兄ちゃんみたい、そう言って笑えば征矢は不機嫌そうな顔をもっと不機嫌そうにした。
なにか怒るようなこと言っちゃったのか、私は謝る。
征矢は、お兄ちゃんなんかじゃ嫌だ、と言った。
「へ」
好きだ、征矢は言った。
え、私は目をぱちぱちと開いたり閉じたりする、征矢は真直ぐ私を見つめている、嘘とか、冗談では、ない、みたいだ。
好き、征矢が、私を。
しばらく見つめあって、征矢の顔が近付いてきた、征矢の手が私の頬を撫でる、え、ちょっと、ちょ、ちょ、待って、そう言えば征矢は止まった。
「いやか?」
「え、と」
心の準備というか、返事聞かないのかい、そう言えば征矢は返事くれんの、そう言った。
返事、いや、その、もう1週間くらい待ってもらえればでますけど、何故か私は敬語だった。
1週間も待てない、今がいい、征矢は言った。
駄々っ子かお前は。
私は目を泳がせて、どう答えようか考える。
ちらり、征矢を見ればばちりと視線が絡み合う。
うわ、こっちめっちゃ見てる。
こんな征矢初めてだ、いつもの征矢なら、目を泳がせて、髪をセットして、おう、とかしか言わないのに。
今日はちょっとおかしいよ。
「あ、そうだ、サッカーはどう?」
「話変えんな」
「う」
征矢は真直ぐ私を見つめる、なんだか全部見透かされる気がして、少しどきどきした。
「好きだ」
二回も言われなくても、一回でわかるよ、照れくさくてそう言ったら返事がないのが悪い、と言われてしまった。
返事、困った。
私は溜息をつく、征矢は俺のことが嫌いなら嫌いって言ってくれ、と言う。
嫌いなわけないじゃないか、大切な幼馴染みなわけで、なんでも言えて、頼れる人なんてそんなにいない。
でも、好きかと言われると答えられない。
だって、そんな目で見てないからだ。
「嫌いじゃないよ」
「なら」
「好き、だけど友達としての、好き」
征矢が私に抱いている好きとは違う好き、そう言えば征矢はそうか、と言って一歩下がった。
「でもお前絶対俺を好きになるから」
私のことをなんでも知ってる征矢がそう言うのだから、近い将来、そうなる日がくるのかもしれない。
「楽しみにしとく」
そう答えて、私は笑った。
征矢はあ、と何か思い出したみたいな顔した。
どうしたのか聞こうとしたとき征矢は次から学校休むときはメールしろよ、と言った。
はいはい、私は適当に返事を返しておいた。