「ばか」
「え」

久しぶりに道で会ったと思ったら開口一番にばか、え、なに俺なにかしたかな。
俺が首を傾げると彼女はなんで黙って消えたの、そう言った、そう言えばエイリア学園に行く時とか言ってなかった、ような。
ごめん、俺は苦笑いする、彼女はばか、そう言って俺の胸に飛び込んできた。

「っと」

飛び込んできた彼女を受け止めて、またごめんと謝る。
彼女は心配したんだから、そう言って俺の顔を見つめた。
俺より少し背の低い彼女が俺を見つめると自然と上目遣いになる。
しかも目が涙で潤んでいる、ちょっと、ほんと、頑張って俺の理性。

「……エロいこと考えてる」
「う…」

バレてた、格好悪いな俺、はは、そんなわけないじゃん、そう言って笑って話題を逸らそうとする、すると彼女はキスぐらいならいいよ、と言ってきた。

「え」
「だから」

キスぐらいなら、そう言って俯いてしまった。
なかなか、可愛いじゃないか。
俺は彼女の頬に手を添えてそっと上をむかせる、そしてほんとにいいの、と聞いた。

「うん」

小さな声で彼女は返事した、じゃ、じゃあキスしちゃうよ、そう言って彼女が目を閉じたのを確認して、そっと唇に触れようとした時後ろから声がした。

「緑川じゃないか」

振り返ると手をぶんぶん振って、こっちにくる円堂くんと鬼道くんがいた。
俺はびっくりして、咄嗟に彼女をぎゅうと抱き締めた。

「きゃ」
「や、やあ円堂くんに鬼道くん」
「ん、誰だそいつ」
「いや、なんでもない」

円堂くんと鬼道くんに俺の彼女を見せたら取られるかもしれない、そんな不安から俺は彼女を力強く抱き締めていた。

「…死にそうだが」
「え、死んじゃだめ!」

鬼道くんに言われてぱっと手の力を緩めた、彼女ははあはあと息をしている。
ほう、可愛いな、鬼道くんが呟いた、まずい見られた。
円堂くんもニコニコしている。
仕方ない、正直に言おう。

「この子、俺の彼女で!だから!とらないで下さいね!」

そう言ったら、鬼道くんも円堂くんも笑った、彼女は顔を真っ赤にしてリュウジのばかと呟くし、俺正しいことしたよね。
不思議がっていると鬼道くんが安心しろ、と言った。
鬼道くんが一番心配なんだけど。

「円堂行くぞ、邪魔したみたいだ」
「おう、そっか、じゃあまたな緑川」
「あ、うんまた明日」

鬼道くんは俺の耳元でキスの邪魔して悪かったな、と言った、わかってたなら邪魔しないでほしかったな、そう思ったけど黙っていた。

「リュウジをよろしくお願いします」
「ああ」
「わかった」

彼女が笑う、鬼道くんはお幸せにな、と笑った、円堂くんは鬼道くんにどういう意味だ、と聞いていた。
やっと二人きりになれた。

「ねえ」
「なに」
「好きだよ」
「恥ずかしいよ」
「俺だって恥ずかしいよ」
「リュウジ、好き」

そう言って、手を繋いで、二人で帰った。
キスはできなかったけど、なんだか満足した。
彼女が隣りにいることが、とても素晴らしいことなんだな。
遠くにいたからわかったこと、ほんとはね、言いたかった、でも心配かけるから言わなかった。
ごめんね、大好きだよ。

「…なに考えてるの?」
「エロいこと」
「ばかリュウジ」

―――――
あれ…飛鷹書こうと思ってたのに…あれこれ、緑川…
あっれええええ?