久しぶりに幼馴染みが俺の部屋へ来たかと思ったら泣きそうな顔して俺の名前を呼んだ。
なになに?どーしたの?俺が声をかけると幼馴染みは俺の名前を呼んで泣き崩れた。
びっくりして、立ち上がって幼馴染みのそばまで行って、大丈夫か訪ねると幼馴染みは俺に抱き付いてきた。
またか。
また、彼氏に何かやられたのか。

「今度は浮気か?」

そう言えば幼馴染みはこくこく頷いて、俺の名前をまた呼んだ。
俺は眉をしかめた。

「だから俺にしとけって言ったじゃん」

自嘲ぎみにそう言えば幼馴染みはごめん、と静かに答えた。
俺がほしい答えは、そんなんじゃない。
俺はごめん、と幼馴染みに謝った、さっきの言葉はあまりにも心無かった。
幼馴染みは首を横にふった。
ありがとう、そう言って頭を撫でると、幼馴染みはジロー、と俺の名前を呼んだ。

「なに?」
「もうだめなのかな」

俺に言われても、わかんないよ、そうは言わずに黙り込んだ。
幼馴染みはそのあとずっと泣いた、1時間くらいして、泣きやんだ幼馴染みは、俺にありがとう、と言って立ち上がった。
また、あいつのところへ行くのか。

「あいつのところへ行くなよ」

腕をつかむ、幼馴染みは静かに俺に謝った。
謝らないでいい、そんな言葉がほしいわけじゃない。
壊れてしまえばいいのに、幼馴染みとあいつの関係。
こんなにも幼馴染みを傷つけて、俺は下唇を噛んだ。

「ジロ、」

俺の名前を呼ぼうとした幼馴染みをぎゅうと俺の腕に閉じ込めた。
幼馴染みは目を丸くして、俺を見た、ずっと、ずっとこうやって俺だけ見つめてくれてたらいいのに。

「なんであいつなんだよ」

本当に俺ってやつは心がないんじゃないかってくらい酷いことを言った。
幼馴染みは静かに謝った。
ばか、なんで謝るんだって、謝らなくちゃいけないのは俺だって、謝るのはおめえじゃない。
本当に壊れてしまえばいいのに、壊してしまいたいのに、壊せない。

「ごめん俺、どうかしてた」
「大丈夫、だよ」

幼馴染みは笑った。
俺はするりと腕から幼馴染みを解放する、幼馴染みはまた、ニッと笑った。
なんでそんな顔するんだよ。
辛いなら、辛いって顔すればいいのに、あいつに辛いって言えばいいのに、なんでこんなに我慢するんだ。

「行くの?(ああ、そっか、好きだから、か)」
「うん、いつもありがとうジロー」
「全然大丈夫だC、じゃあまた、学校で」
「うん、学校でね!」

笑いながら俺の部屋を出て行く幼馴染みを、俺は笑顔で見送った。
ばかみたいだ、俺。
どんなに優しくしたって、幼馴染みはあいつを好きなのに、まだ、望みを捨ててない。

「ばかみたいだ」

そう呟いて、泣いた。