※現パロ
























委員会、していいんかい、上出来だ。つまらないギャグを考えている七松先輩に私は溜息をついて声をかける。
七松先輩、女の子が、呼んでますよ、そう言えば七松先輩はそうかと私の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。
私はやめて下さいセクハラですか、と言えば相変わらず私の頭をぐしゃぐしゃと撫でながらはっはっはっと笑っていた、だからセクハラかっつってんだよばか松。
てかはげてしまえ、こんなやつはげてしまえ。
しかし髪もっさもさだぞはげる気配ねぇな。

「早く女の子のとこ行ってあげて下さい、どうせ告白ですから、オッケーとかして付き合っちゃって下さい」

私がそう言えば七松先輩はまた笑った。
なんだこの人笑ってばっかりだぞ、頭いかれたか、前からいかれてるかそうだそうだ。
七松先輩はじゃあ行ってくると言って女の子の方へ行った。
あー行った行った、もうさっさと行けよあのばか松。
委員会中だってのに委員長がいなくていいんかい。
あ、やべうつった。
私は口元に手をそっと添えた。
もうだめだわ、私七松病(ばか病とも言う)で死ぬわ。
溜息をつくと七松先輩がもう帰ってきた。
一生帰ってこなくていいのに。
七松先輩を睨み付けるとそんなに見つめても何もやらんぞと笑った。
誰がお前なんか見つめるか、睨んでるんだよばか松。
それにしてもばか松のくせに何故かこいつは学校でも外でもモテるんだよな。
確かにまあまあ優しいし、顔も悪くないが、ばかだぞこいつ。
いや、もうオーラがばかだぞ。
いいのかそんなんで、最近の若い女ってのは全く。

「おい」

じろり、七松先輩をもう一度睨む。

「なんですか」
「断ったぞ」
「今日もですか」

ばか松は毎日のように告白されるが毎回フっている、理想が高いのかしら。

「まあしかし、いいですね、そんなにモテて」

私がけらけら笑うと七松先輩は真剣な顔して、よくないぞ、と言った。
私はは?と聞き返した。
よくないぞ、また七松先輩は言った。

「なぜ?」
「好きな人からは好かれていないんだ、なにもよくない」
「それは、悲しいですね(七松先輩にも好きな人いるんだ)」

私が適当に返して七松先輩を見れば七松先輩は小さくなって震えていた。
まさか、泣いて、る。
大丈夫ですか、そう聞こうと思った瞬間七松先輩は、何故だー!と叫びながら私をいきなり押し倒した。

「ちょ、七松先輩」
「何故キミは私を好きになってくれない」
「え」

七松先輩の目には、涙が浮かんでいた、そんな、七松先輩が、私のことが、好き、なんてありえない。
だって七松先輩は私以外の女の子には紳士なのに、私には全然優しくしてくれない。
すごく、わがままな人だもの。
泣きたいのは、私の方だ。

「なんで、好きなのに、私には、いじわるばっか…」
「キミの前だけ、本当の自分でいられるんだよ」

そんなやすい言葉で納得できるものか、そう言ってやりたかったけど、なんだかそんなやすい言葉が嬉しかった。
だってみんな本当の七松先輩を知らないんだ、知ってるのは、私と七松先輩だけなんだ。
ぱっひょひょひょいと高くジャンプしたい気持ちを押さえて、私は静かに涙をふいた。

「キミは笑ってた方が綺麗だよ」

そう言って笑う七松先輩にむかって思い切り笑ってやった、どうだまいったか、私の小さな仕返し、本当に小さくて、鈍い七松先輩は気付くこともないだろうけど。
七松先輩は私の笑顔を見て目を細めた。
くそ、格好いい、悔しい悔しい、私が仕返ししたはずなのに。
地団駄踏みたい気持ちを押さえていると七松先輩の顔が近付いてきて、ちゅ、と私の唇にやわらかいものがあたった。
え。これって。

「わわわわわわわばか松このやろ!」

思い切り七松先輩を殴る、七松先輩はニッコリ笑っていた。
ドM!?
それより。

「私のファーストキスが」

そう言えば七松先輩は豪快に笑った、はっはっはっ初めてだったか、はっはっはっ、そう言う七松先輩をもう一度殴ってやった、ばか松このやろう。

「てか殴られて笑うなドM」
「違うぞ、これがキミの愛だから受け止めてるんだ」

七松先輩は何故か嬉しそうだった、私ははあと溜息をついた、だめだこのばか頭がいかれちまってる。
私はがくりと肩を落とす。
七松先輩は大丈夫か、と私の顔を覗き込んだ。
顔が近い。

「っ、ばか松このやろっ」
「なんだ照れているのか、可愛いな」

目を細めるな、ばか松、そう叫んで私は赤くなってしまった頬に手をやる、くそなに赤くなってんだ私。
さっきのキスのせいだ、全部全部。
全部ばか松のせいだ。
ばか松なんか嫌いだ、そう叫べば七松先輩は目を真ん丸にして、私を見つめた。

「げ」

七松先輩の綺麗な瞳からは、涙がほろりほろりと零れていた、私はこの涙というやつに弱い。
友達が泣きながら何かを頼みにくると必ずイエスと頼みを聞いてしまう、たとえ死ぬほど嫌なことでもだ。
私はごめんなさいと謝る。
七松先輩はほろほろ泣きながら、そんなに嫌いか、と聞いてきた。

「(いや、嫌いっていうか、)」

どちらかと言われれば好き、だ。
委員長としてやることは一応やっているし、他のみんなには優しいし。
笑った顔も、困った顔も全部格好いいし。
でも、私とは釣り合わないのだ。

「な、七松先輩には、他、にいい人が、い、いますよ」

吃りながら、つまりながら、そう言えば、七松先輩は私はキミじゃなければだめだ。と言った。
ほんとなんなんだこの人、恥とかないのか。
私は、とにかく、すみません、と答えた。
七松先輩はそうか、と静かに返事をした。
よかった、諦めた。

「でも私は諦めない!」
「は」

顎がはずれるかと思った、なに言ってるんだこの人は。
私は口をぽかんと開けて、ただ、豪快に笑う七松先輩を見ていた。