「あ、におーだ」

屋上で授業をサボっていたらのそのそとにおーがやってきた、私はニッと笑って隣りに座るように促す。
におーは、よう、と言って手をひらひらさせて私の隣りに座った。

「におーはなんの授業なの」
「体育」

ふむふむ、それはサボりたくなりますな、そう言えばお前さんは、と聞かれたので勿論英語、と返した。

「相変わらずじゃの」

それはにおーもだよ、私はまたニッと笑う。
におーはなんだか面倒くさそうに欠伸をした。
なんだか私も眠くなってきた、私は目を瞑る、におー眠い、そう言えばにおーは寝たらよか、と答えた。

「よかよか」

私が目をキッと開けて頷くとにおーは困ったように笑った、あれ、ウケてない。

「ウケてない」

ぶつぶつと文句を言えばにおーは笑った、私におーの笑いのツボがわからないや、そう言えばにおーはわからなくてよか、と笑った。
におーは女の私なんかより綺麗に笑う、どこか儚げなその微笑みは、涙を誘う。

「私におーになりたかったな、来世で必ず…!」
「俺はお前さんになりたかった」

冗談みたいに笑ってほしかったのに、におーはばかみたいに真面目に返してきた。
におーが私になりたい?ばか言えよ。
私みたいに、ばかで、不細工で、性格悪くてどこもいいとこなんかないよ、あ、性別か?女の子になりたいのか?そう言えばにおーは肩をがくりと落として、溜息をついた。

「俺は、お前さんみたいに、優しいやつになりたかった」

そう言った時のにおーが、なんだか泣いてるように見えて、見ちゃいけない気がして、私はがばりとにおーを抱き締めた。
これで見えまい。

「  」

静かに名前を呼ばれた、におーは優しいよ、優しい子だよ、私なんかよりずっと、ずっと、そう言えばお前さんにはわからんよ、そう言ってにおーは私の背中に手をまわす。

「わっ、私知ってるよ、におーが、優しいってこと、少なくとも私だけは知ってる、よ!」

気がついたら叫んでいた、におーは優しく微笑んでいた、ねぇ、におー、私は本当に知ってるよ。
におーは優しいよ。