※ちょいシリアス(ハッピーエンド)













放課後、職員室へ行こうとしていたら、職員室から先輩がでてきた。
俺を見つけた先輩はまるで玩具を見つけた子供のように目をキラキラさせて俺を呼んだ。

「ひーよーちゃん!」
「…その呼び方、やめる気ありません?」
「ないよ」

ふふふ、と可愛らしく笑う先輩から俺は溜息をひとつついて目を逸した。
ひよちゃん?先輩が俺の顔を覗き込んだ、俺はなんでもないですよと答えて職員室に入っていった。
先輩は困ったように笑った。
職員室から出ると先輩が鳳とニコニコ笑いながら話していた。
ずきん胸が痛む。
胸に手をあてる。
ずきずき、胸の痛みはとれない。

「ひよちゃん!」
「日吉」

先輩が俺に気付いて笑う、鳳も俺の方を見てニッコリ笑った。
その時並んだ二人がお似合いのカップルに見えて苛々して、俺は二人を無視して歩き出す。
すると先輩は困ったような顔して鳳にじゃあまたね、と手を振った。
鳳もはい、と返事してニコニコ笑っていた。

「待ってたんだよひよちゃん」
「別に待ってろなんて言ってないですよ」

本当は待っていてくれて、嬉しいのに、素直になれない。
そんな自分に苛々して、俺の腕を掴んだ先輩の手を振り払った。

「どうしたのひよちゃん」

また先輩は困ったように笑った。
鳳と話している時にはこんな顔しないのに。

「俺と話すのが楽しくないなら鳳と楽しく話していればいいじゃないですか」

言ってしまった。
先輩は驚いたみたいで、それでも笑顔を絶やすまいと笑っていた。

「ひよ、ちゃん?」
「狡いですよ、先輩は」

そう言って走り出した、先輩が二度ほど俺の名前を呼んだが俺は止まらなかった。
教室へ戻って鞄を持って部活へと向かう。
急いでいたので階段から転げ落ちそうになった。
部室で着替えていると向日さんと忍足さんがこそこそ話をしていた。
どうせまたくだらないことでも考えているんだろう、溜息をつくと二人がにやにやしながら俺のところへきた。
何事かと思っていると二人は俺に声をかけてきた。

「泣かせたんやて?」
「は?」

意味がわかりません、と答えれば向日さんが女を泣かせてただろ、と俺に言った。
もっと意味がわからない。
女を泣かせた記憶なんかないですよ、そう答える。

「だって鳳が言ってたぜ」
「鳳…?」
「職員室前でさ、日吉となんか話して日吉が突然走り出してあいつが泣いちゃったって」

そんなばかな。