擦り傷がやけに痛かった、あの夏は、私達にとって、最後の最高の夏だった。
目の前で選手達が泣き崩れた時、敗北を感じた。
私達は負けたんだ、もう夏は終わったんだ、そう思った瞬間何か込み上げるものがあった。

「悪い」

いつもへらへらして、ただのエロ親父みたいな島崎が私に謝った、何故謝るのか聞けば、最後の夏、甲子園連れていけなかった、と言った。
私はばか、と言った、島崎はただ頭を下げたまま、泣いていた。
私は、ばかとまた言った。

「なんで謝るのよ」
「悪い」

島崎は謝った、こんなに謝る彼を見たのは初めてだ、私はまたばかと言って走り出した。
あのままあそこにいたら、島崎にもっと辛くなるようなこと、言ってしまいそうだったから。
私はひとり公園のブランコに座る、ギィ、ギィ、ブランコがなる。

「ばか…」

なんで、謝るのよ。
小さな声で呟いた、一生懸命やったのなら、どんな結果だって私は構わなかった、なのに、なんで謝るの?
申し訳なさそうな顔をするの?
私の方が泣きたくなるじゃない。
島崎のばか、私は小さな声でそう言って、立ち上がった。
すると公園の入り口に島崎が息を切らして立っていた。

「島、崎」

島崎がずんずん近付いてきて、がばり、抱き締められた。
え。え?私はわけわかんなくて、混乱した。
島崎は静かに言った。

「最後の夏、甲子園連れてけなくて、格好悪い俺だけど、お前のこと、」

好きなんだ、本当に静かだった。
いつもへらへらぐだぐだな島崎が、らしくない。
でも、私は何故か涙が溢れた。

「ほんとに?」

涙でぐしゃぐしゃな顔で島崎に引かれるんじゃないかと思った、島崎は引かないで、本当だと答えた。

「ねぇ、私も」

好きなの。