「雅治ー」

ぎゅうう、と雅治の背中に額を押し当てて手を腰にまわす、雅治はくっつきむしかお前さんは、と笑った。

「くっつきむしです」

そう言って鼻を啜ると雅治はなに泣いとるんじゃ、と言った。

「泣いてない、寒いだけ」
「そうか」
「本当だからね」
「わかっとる」

雅治の声は優しい声だ。
安心する、私は目を閉じる。
雅治は寝るんじゃなか、と体を揺すった。
私はうんと返事して目をあけた。
目がしばしばする、寝たいよ、そう言えば雅治はくすくす笑った。

「嘘じゃよ、寝てもよか」

雅治は優しい、私はうんと返事して目を閉じた。
雅治の背中はあったかい。
すぐ眠れそう、ああ、夢の世界に行けそう。

「寝たか?」

雅治の声、私は返事が面倒くさかったのでぐー…と寝たふりをした、ばればれの寝たふり。

「好きじゃ」
「えっ」

目がぱっちり。

「ケーキがの、ブンちゃんにもらったんじゃが、俺ケーキ意外と好きじゃ」

雅治は笑った、ケーキ、ちょっと私のときめき返してほしい。

「ばか」
「期待したんか?」

くすくす、くすくす、雅治が笑う。
私はふんと言って、期待しちゃ悪い?と言った。
雅治はまだくすくす笑っている。

「ばかじゃのぅ」
「ひっど!」
「じゃがそういうとこが好きじゃ」

雅治が笑った、もう騙されないから、私はそう言って額を雅治の背中にくっつける。

「嘘じゃなか、信じんしゃい」

雅治が溜息をついた。

「やだ」
「ぴよっ」
「もう嫌い」
「なら離れんしゃい」

私はやだ、と答えた。
雅治は溜息をついて、わがままじゃのぅ、と言った。
「私はわがままだよ、知ってるでしょ」
「ぷりっ」
「雅治」
「なんじゃ」
「…やっぱなんでもない」
「好きって、言ってくれんのか」
「やーだよ」

今度は私がくすくす笑う、雅治はむすっと頬をふくらました。