ジロー、小さな声で彼の名前を呼ぶと彼振り向いて私を見て、笑った。
私も彼の隣りまで駆けて、ニッと笑った。
彼は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
私は、髪がぐしゃぐしゃになってしまってしょんぼりと肩を落とした。

「ジローのばか、髪ぐしゃぐしゃじゃない」

ジローは目を細めてなんだか嬉しそうな顔をした、私、怒ってるのよ、と言えばジローはごめんと笑った。
謝る気ないじゃない、そう言えば怒る気ないじゃん、そう言い返された。
ごもっとも、と笑う、ジローも笑った。
ジローはするりと私の手を握った、どき、どき、心臓が煩い。
ジローの手、意外と大きいな。
背も私より高くなっちゃったし、男の子なんだなあ。
なんだか微笑ましくて、私は笑った、ジローは、何笑ってんの、って感じの顔をしたけど私は気にしなかった。

「ジローも男の子なんだね」
「なに?女に見える?」
「そうじゃないけどね」

そう言って、握った手に力をこめる。
ジローは満足そうに微笑んだ。
そんなジローを見たら、心臓がさっきより早く脈打つ。

「ジローのせいだ…」
「は?」
「私このまま死ぬかもしれない」

そう言って胸のあたりを触る、ジローはびっくりしたみたいでえ?え?と目をぱちぱちした。
私は、心臓がいつもより早く脈打ってる、と言う。
ジローはぽかんとした。

「…」
「これは死ぬ…」

そう言えばジローはくすくす笑った。

「それってどきどきしてるだけなんじゃ」
「え?どきどきじゃないよ、どくどくだよ?」
「…」

ジローははあと溜息をついてだめだこりゃ、と言った。
た、溜息。
私はジローといれて幸せだけど、ジローはどうなのかな。
ジローが私といて幸せだったら嬉しいけど、違ったら悲しいな、でも怖くて聞けないし、どうしたらいいんだろう。
ジロー、小さな声で彼を呼ぶ、くるり、彼が私を見る、俺幸せだよ、彼は笑った。

「私も幸せ」

それだけ言って前を見るとジローがとんとんと肩を叩いた、なに?振り向くとちゅ、とキスされた。
キス、され、た?

「えええええ」

ジローは煩いなあと耳を両手でふさいだ、私はまだびっくりしてる、駄目ださっきよりも心臓が早く脈打つ。
死んじゃうよ、ジローに言えばジローは死なないよ、と笑った。