数週間後、ジローと向日くんが部活がすぐ終わるらしいので一緒に帰ることになった。
部室の前で待っていると男子テニス部のいろんな人に声をかけられて困った。

「悪い、遅くなった」
「だ、大丈夫だよ」

ニッと笑うと向日くんもニッと笑った。
ジローがラブラブだねぇ、と欠伸をしながら言った。
二人して顔が赤くなる、それを見たジローは笑いながら帰ろうかと言った。

「うん」

向日くんと手を繋いで、歩き出す、向日くんはなんだか嬉しそうだった。
そんな向日くんを見たらなんだか私も嬉しくなってきた。

「ジロー遅いよ」
「眠いから仕方ないC」

ジローは今にも寝そうな感じで、必死に目をこすって起きていた。

「ジローいつも眠いって言うけどいつか眠くない日はくるの?」
「こないな」

ジローは遠いところを見ていた。
向日くんはこないのかよ!とツッコんでいた。
私はそんな二人を見て笑った。
自然と笑顔になれる、この時間が、私は、好き。
こんな時間私には勿体ないくらいだけど、神様の贈り物だと思って、大切にすごしたい。
ぎゅうと向日くんと繋ぐ手に力をこめた、向日くんが、私を見る、そして頭を撫でられた。
私はびっくりして顔が赤くなった。
ジローはニヤニヤしながらそんな私を見つめていた。

「なに?」
「いや、ラブラブだなと思って」

笑うジローに向日くんは当然だ、と言った。
ジローははいはい、と適当に流していた。

「でもさ、まだがっくん名前で呼んでもらってないよね」
「ああ、確かに」
「俺の勝ちだね」

ジローはニッと笑った、向日くんはそんなジローを見てなんだと俺の方がどう考えても勝ってるだろ!と怒鳴っていた。

「えー名前で呼ばれてない人に勝ってるとか言われても全然悔しくないC」
「くそくそ!なんでジローに負けなきゃいけないんだよ!」

向日くんがあまりにも悔しそうだから、私は、覚悟を決めて、向日くんのことを名前を呼ぶことにした。

「が、」
「ん?」
「どうした」

二人が私の方を見る、恥ずかしい、けど、向日くんのため、だから。
私は深呼吸した。


「岳人、」

かあ、向日くんの顔が真っ赤になった、ジローはニヤニヤと笑っていた。
私も顔が赤くなる、はあ、息を吐く。

「どうしたんだ、と、突然」
「向…、岳人が、勝てるように私頑張る」

そう言うと向日くんはまた顔を赤くして、私を抱き締めた。
そして耳元でありがとうと囁かれてびっくりした。

「どうだジロー!」

向日くんはかっかっかっと笑ってジローを指さした。

「でもまだ俺勝ってるC」

ニッコリ、ジローが笑った。
向日くんがは?と言って首を傾げる。
ジローはニヤニヤしながらとにかく勝ってるCと言った。
私は考えた、向日くんどこが負けてるかなあ。

「くそくそ!どこが負けてんだよ!」

向日くんが地団駄踏んだのを見てジローは知りたい?と聞いた。
向日くんはもちろんと答えた。

「俺、おでこにキスしてるから」

ジローが笑った、あ、そうだこの前キス、された。

「ああ、幼稚園とかの時だろ」
「数週間前」
「なっ」

本当か、と私に聞いてくる向日くん、こくりと頷くと向日くんはかたまった。

「向日く、…ん」

声をかけようと思ったら唇に何かあたった。
目の前には向日くんの顔、き、キス、された。
向日くんの顔が離れていった。

「これで俺の勝ちだろ」

へへん、と向日くんが笑った、キス、され…キス…。
向日くんにキスされ…。

「お、おい」
「倒れたぞ、がっくん毒でも盛ったか?」
「んなわけねぇだろ!」
「びっくりした…」
「うお!生き返った!」
「大丈夫だったか」

二人が私を心配してる、心配してくれる、なんて、嬉しい、な。

「だ、いじょぶ、ありがとう」

二人が笑った、私、今、幸せです。