お昼休みに、私は知らない女の子達に声をかけられた、なんだかわからないけど、ついてきてほしいらしい。
私ははい、と返事をしてついていった。
ついたのは体育館の裏だった。
何事かと思ってきょろきょろしていると女の子達がやっと口をひらいた。

「貴女、向日くんのなに?」
「え」

まさか向日くんの名前が出るなんて考えてなかったから、私はびっくりして素っ頓狂な声がでた。
女の子達はそんな私の姿に苛ついたのか、もう一度大きな声で向日くんのなんなの!と叫んだ。
びくっ、肩が跳ねた。
私は、向日くんのなに、なんだろう。
彼、女でいいのだろうか。
私は、小さな声で、彼女です、のかの、まで言った時女の子達に声を遮られた。

「はあ?あんたみたいなのが向日くんの彼女のわけないでしょ!」

ガン、女の子が壁を蹴った。
びくり、私の肩がまた跳ねた。
彼女、じゃない、なら、私は、なに?

「なに?貴女向日くんのこと好きなわけ?」

女の子が笑った、私は、向日くんのこと、好き、なんだろうか。

「わっ、私、は、向日くんのこと、に、にが、て、です、でも」

ガシャン、そこまで言った時、音がして音の方を見ると向日くんが教科書ノート、筆箱を落としていた。
びっくりして、声が、いつもよりもっと小さくなる。

「む、かひ、く」
「悪い、」

そう言って、向日くんはさっさと教科書、ノート筆箱を片付けてどこかへ行ってしまった。
女の子達もいつの間にかどこかへ消えてしまった。
聞かれた、苦手だって、こと。
これで、前の生活に戻れる?
嬉しい、はず、なのに、なんで、こんなに悲しいの。
なんで涙が零れるの。

「お、おい」
「ジロー…?」

目の前にはジローがいて、涙が止まらなくて、ジローに縋って泣いた。
ジローは私の背中をぽんぽんと優しく叩いてくれた、そしてゆっくりで良いから、何があったか聞かせて、と耳元で優しく囁いた。
私は全部話した、泣きながら、途中何回も止まったけど全部、全部話した。
ジローはただ黙って聞いてくれた、チャイムは何回かなった、確実にお昼休みは終わっていた、けど、ジローは気にせず私のそばにいてくれた。
それが嬉しくて嬉しくて、ジローの背中に手をまわしてぎゅうってした。

「がっくんのこと、好き、なんだね」
「わか、ん、な…向日く、いつの間にか、気になる、人になっ、てて。好き、なのかな」

そう言うとジローは何回も納得するまで考えな、と笑った。
私は、うん、と返事して、もう一度ジローにぎゅうとした。