朝、学校に行こうと思って玄関を出ると目の前に向日くんが立っていた。
びっくりして声が出なくなった私に向日くんはおはようと爽やかに挨拶をした。

「おっ、おはよ」

びくびくしながら返事をして、鍵を閉める、向日くんは親は?と言った。

「わっ、私の、親は、海外で仕事、してて、あんまり、帰って、こなくて」
「悪い(だからこの間もジローが会話遮ったのか)」
「私に、興味ない、みたいで、会話なんてなかった、」

私が話しかけても、答えてくれなかった。
そう言って、俯くと向日くんは私の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。

「む、かひ、く」
「ごめん、ほんと、俺、知らなくて、」

向日くんは、悪くないのに、何故か謝られて、私は、何も言えなかった。

「ほんと、ごめんな」
「だ、いじょうぶ、だよ」

ニッコリ笑うと向日くんはなんだか苦しそうな顔をして、俯いてしまった。
ああ、私悪いこと言ってしまったかもしれない、私も俯くとどこからかひょっこりジローが出てきて何落ち込んでるんだCと言ってでてきた。

「がっくんが落ち込んだらこいつも落ち込むよ、だからがっくんは笑ってなきゃ」

ジローはそう言って向日くんの頭を撫でた。
向日くんは、ジロー…と感動したみたいで目が潤んでいた。
私は相変わらずジローは変なことを言うなあと思いながらジローを見つめるとジローが向日くんを指さした、向日くんは元気になったみたいだった。

「元気100倍!あんぱ「もう行かなくちゃ遅刻だC」

向日くんの言葉を遮ってジローが叫んだ。
向日くんががくりと肩を落とす。
そんなこと気にせずジローは行こう行こうと私の手を引く。
向日くんがそれに気付いたみたいでジローに離せと叫んでいた。
ジローは嫌だCと笑った、なんだか、おかしくって、私も笑った、すると、ジローも向日くんも安心したような顔してた。
私のこと、心配してくれる人が、いる、そう思うと嬉しくて、ぎゅうとジローと繋いだ手に力をこめた。
ジローはなんだか嬉しそうに、いっくぞー!と私と繋いだ手を高くあげた。
向日くんはだから離せ!と叫んだ。
自然に笑顔になれる、こんなかけがえのない時間があることを、私は知らなかった。