「起きろー」
「ん…」

ジローの声がして、私は目をさました、目の前にジローの顔があってびっくりした。
うおっ、と女の子らしからぬ声をだしたらジローがしーと口に指をあてた。

「がっくん寝てるから」
「あ……うん…」

こくりと頷いて、ふうと息を吐く。
ジローは向日くんの髪を撫でた、向日くんは気持ちよさそうに寝ている。

「こいつおめぇが髪撫でてくれてると思ってニヤニヤしてるC」

ジローはそう言ってけたけた笑った、わ、私が撫でたら、向日くんはニヤニヤする、のだろうか。
それって、いいこと?
向日くんが私を好いてくれてるって、こと?

「何赤くなってるんだC」
「じっ、ジローが変なこと、言う、かっ、から」

顔を両手で覆う。
ジローは溜息をついて変なことなんか言ってないCと言った。
へ、変なこと言ってるよ、そう思ったけど何も言わなかった。
そうだ10分したら起こしてと言われていたんだ、私は時計を見る。

「もう1時間以上たってる!?」

そう言ってびっくりしているとジローはうん、と目を丸くしていた。
私は急いで向日くんを起こす。

「ん…」
「ごめん向日くん1時間以上たってる…」

私が向日くんに謝ると向日くんはまじで?と欠伸をしながら起き上がった。

「うん、私も、ね、寝ちゃって」

怒られる、そう思ったら向日くんは笑った。
私はびっくりして目をパチクリした。

「向日くん、お、怒って、ない?」

恐る恐る聞くと向日くんはぽかんと口を開けた。
そして、なんで怒るんだよ、と笑った。

「だっ、て、私、10分したら起こせって、でも1時間以上」
「寝ちゃったんだろ?」
「うん」
「仕方ないって」

俺も寝てたし、と向日くんは伸びをした。
お、怒らない、向日くんは優しいんだな。

「あーやべ、急いで帰らなきゃ」

向日くんは鞄から携帯を取り出して言った。
ジローも俺もそろそろ帰る、と言って帰り支度をしていた。
なんだか、寂しい、な。
帰ってほしく、ない。
こんなの、私のわがままだってわかってる、でも、帰って、ほしくない。
私は気がつけば向日くんの袖を掴んでいた。
向日くんは首を傾げた。

「どうかしたか?」
「な、なんでも、な…」
「そっか」

そう言って笑った向日くんが眩しくて、私は目をぎゅうと瞑った。
ジローは、私の気持ちに気付いたみたいで、俺の家来るか?と言ってくれた。
向日くんはびっくりしていた。

「(ジローの家にこの時間から行くって泊まるってことか?それは断るだろ!)」
「もう大丈夫」
「(こ、断った…よかった)」

私が笑うとジローも安心したように笑った。
向日くんも理由はわからないけど安心したように笑っていた。
ジローと向日くんの帰り支度が終わったみたいで、帰るわ、と言って玄関まできた。

「じゃ、あね」
「また明日な」
「眠い」

向日くんがニッと笑って私に手を振った、ジローは眠いと言ってたから、向日くんにもたれかかっていた。
私はそんな二人の背中が見えなくなるまでずっとずっと手を振った、ずっと、ずっと。