向日くんは私を好きな理由を話し出した、どく、どく、心臓が脈打つ。

「たまたま水道の前通りかかった時、こいつが教室の花瓶の水かえてたから…」

へへっと照れくさそうに向日くんは笑った、ジローはすごく白けた顔をして、は?なにそれギャグ?と言った。

「ギャグじゃねぇよ!そ、それから気になって毎日こいつのこと見てたら、すげー優しいから」

かあ、向日くんの顔が赤くなるのと同時に私の顔も赤くなる。
でもジローは白けたわ、と言って溜息をついた。
向日くんは白けるなよ!と地団駄踏んで、それでもジローはいや、白けるよこれは、と言っていた。
私は、なんだか恥ずかしくて、もう帰ろうと言った。

「そ、そうだな帰ろう」
「帰って寝るー」

向日くんが、私を好きな理由は、私が優しいから、らしい、でも私、そんなんじゃない。
優しくなんかない、少し、肩を落として帰った。

「じゃあまたな!」
「送ってくれてありがとう」

向日くんに頭を下げると向日くんはおうと言って帰っていった。

「ジローはいつまでいるの?」

ずっと私の隣りで向日くんに手をふるジローに声をかける。

「おめぇの手料理が食べたいなーと思ったんだけど」
「………炒飯のみ」
「よっしゃあ」

ジローは単純だ。
私がジローに炒飯を作ってあげると、パシャリと携帯で私の炒飯を写真で撮って誰かに送っていた。

「誰?」
「がっくん……あ、がっくん戻ってくるって」
「え」

そう言った時にはインターホンがなった、ジローが来た来たと玄関に行く、ま、まってよ、と私も玄関に行く。

「いらっしゃーい」

ジローがニコニコしながらドアを開ける。

「お、お邪魔します」

向日くんがきょろきょろしながら頭を下げた、私はは、はい!どうぞ、と返事をしてさっきまでいたリビングへ行く。

「ちゃ、炒飯でいい?」
「あ…ああ」

私の分の炒飯をお皿に盛り付けて向日くんに出す、向日くんはさんきゅーと言って食べはじめた。
ジローも食べている。

「親は?」

向日くんが食べながら私に聞いてきた。
ぴたり、私とジローの動きが止まる。

「まあまあ、がっくん美味しいでしょこいつの炒飯」
「あ、ああ」

ジローがうまく話を逸してくれた、私はホッとして息を吐く。
向日くんは不思議そうに首を傾げながら食べていた。

「ごちそうさまでした」
「ごちそうになりましたー」

二人が食べ終わって、私はお皿を洗っていたら、向日くんが手伝うか?と聞いてきたので大丈夫、と答えておいた。

「てかさお前らって本当に仲いいよな」

向日くんが水を飲みながら私とジローを順番に指さした。

「そ、うかな?」
「ああ、てかジロー寝てるし」

向日くんがジローの頬をつんつんとつついた。
私は首を傾げる、お皿の泡を水で流す。

「だって毎日ハートつきのメールしてるし膝枕するしエトセトラエトセトラ」

向日くんはジローの頬をぎゅうと摘んだ。
私は反対の方向に首を傾げる。
お皿洗いが終わったのでタオルで手をふいて向日くんの隣りにちょこんと座った。

「ハートは、時、々だし、膝枕、は、無理矢理、だよ」

私が苦笑いすると向日くんはでもなあ、と首を傾げた。

「向日くんも、やる?」
「え」
「膝枕、」

向日くんは目を丸くして私を見つめた。
そして、いいの?と首を傾げてきた、私はうん、と返事した。

「だって、私の………か」

彼氏、なんだから、と言えたらいいのに。
私は、言えなかった、向日くんはこんなにいい人なのに、私のこと好いてくれてるのに、応えられない。
簡単なことなはずなのに、向日くんのこと、まだ、少し苦手だ。
気になるのに、怖くて、認めたくない。

「と、とにかく、膝枕くらいなら」

ね?と笑うと向日くんは顔を真っ赤にしてじゃ、じゃあお願いしよう、かな、と言った。

「じゃあソファのところ、行こうか」
「お、おう」

静かに立ち上がる、ジローが起きませんように、ジローに見られたらなんて言われるか。
私ははあと溜息をついてソファに腰掛ける。
向日くんも隣りに腰掛けた。

「じゃ、じゃあ、いいか?」
「うん」

そう言って笑うと向日くんはそっと私の膝に頭をのせた。
わ、髪さらさらだ。
そっと髪を撫でると向日くんがぴくりと動いた。
き、緊張する、それは、きっと向日くんも一緒なんだろうけど。

「あの、」
「なに?」
「ね、寝ていいか?」

私はいいよ、と答えた、向日くん、練習頑張ってたもんね。
疲れたよね、きっと、ジローも。

「10分くらいしたら起こして」
「あ、うん」

そう返事してからすぐに向日くんの寝息が聞こえた。
私も、疲れたな。
気がついたら、私も、寝ていた。