練習が終わって、向日くんが私のところまで駆けてきた。

「すぐ着替えてくっから待ってろ、一緒に帰ろうな」
「うん」

こくこく頷くと向日くんは笑顔で、じゃあな、と言って走っていった。
私はうん、と小さな声で返事して向日くんの背中を見えなくなるまで見ていたら後ろからジローにがばりと抱き締められた。

「わっ、」

ジローは俺のこと見てた?と聞いてきたので途中まで、と答えた。
ジローは不思議そうな顔した。

「途中?」
「休憩のあ、あとは、向日くんがお、れ、だけ見てろって」

そう言うとジローはニィと笑った。
私はその笑みの意味がわからなくて首を傾げる。
ジローが私の手を取って、歩き出す。

「じ、ジロー、向日くんは待ってろって」
「Eーの!」

ジローに引っ張られながらついたのは男子テニス部の部室だった。
私はなんでこんなところに来たのか全然わからなくて、首を傾げる。
すると向日くんが中から飛び出してきた。

「わっ、なんだ来たのか」

向日くんがニッと笑う、私はジローがこいって、ともごもご言うと向日くんは首を傾げた、聞こえなかったみたいだ。
私はもう一度大きな声で言おうとしたらがばりと抱き締められた。
向日くんかと思ったけど違う、ジローだ。
私は顔が真っ赤になる。

「!」
「じ、ジローやめてよ…」

そう言ってもジローは柔らかい、と言って私の頬をつまんだ。
私は諦めてもう何も言わずにされるがまま。

「がっくんも触りたいでしょ」

突然何を言い出すかと思ったらもうジローの言う事には脈絡がない。
向日くんはかあと顔を真っ赤にして離れろよ!と叫んだ。

「いやだ」
「くそくそ!なんで、お、俺のか、かの、彼女なのに!」

吃りながら向日くんが叫ぶ、ジローはニヤニヤしながら、がっくんの彼女の前に俺の幼馴染みだもん。と言った。

「煩いですよ」
「仲良しですね」

しかめっ面の日吉くんとニコニコ笑っている背の高い知らない子が声をかけてきた、私はどうしたらいいのかわからないので、取りあえず頭を下げた。
向日くんはくそくそ!ひよっこが口出すなよ、と地団駄を踏んで、ジローは日吉も鳳も帰りなのー?と聞いていた。
背の高い子、鳳って、名前なんだ。
じいと鳳くんを見つめていると鳳くんが私に気付いて声をかけてきた。

「芥川さんの彼女さんですか?こんにちは」

ニッコリ笑った鳳くんに、私ジローの彼女じゃありません、と言った。

「ばか、この人は向日さんの彼女だ」

日吉くんがそう言ってもっと眉をしかめた。

「そうなんですか、すみません!」
「い、いえ、だ、だだ大丈夫です」

鳳くんががばりと頭を下げる、私もつられて頭を下げる、ジローがなに頭下げてるの、と言った。

「な、なんとなく」

そう答えるとジローはばかじゃないの、と笑った、私もえへへと笑う、向日くんがジローに離れろとまた言った。
ジローはなんでー?と向日くんに言う、向日くんは顔を真っ赤にして、こいつは俺の彼女なの!と叫ぶ。

「向日さんって恥ずかしい人ですね」
「くそくそ!ひよっこのくせに!」

向日くんはすごく恥ずかしそうだった。