屋上に授業をサボりに行くと珍しい人がいた。

「鬼道さん、」

控え目に声をかけると鬼道さんは私を見て何も言わず空を見上げた。
私は鬼道さんの隣りにいって座る、そして空を見る。
何も言われなかった、多分、ここにいてもいいと思ってくれてるんだろう。
私は持って来た教科書とノートと筆箱を隣りにおいて、壁に寄り掛かった。
相変わらず鬼道さんは何も言わない、なにを考えているのかもわからない、多分、サッカーのことなのだろうけど。
ふと視線を感じて隣りの鬼道さんを見ると鬼道さんは私を見ていた。
私はどきりとした。

「なんですか」
「なんでも…ない」

そう言って鬼道さんはまた空を見上げた、空が、好きなのだろうか。意外だ。
ノートの後ろから一枚破る、綺麗に破れて少し嬉しかった。
紙飛行機を折っていく、途中わからなくて鬼道さんに聞いてみた、鬼道さんは苦笑いしながら教えてくれた。
紙飛行機、折れるんだ。
折っている時ちょこんと、手と手、指先が触れる、少し照れくさそうに手を引っ込める鬼道さんが可愛かった。

「折れた」

我ながら子供みたいにはしゃいだと思う、そんな私を鬼道さんはずっと見ていた。
はしゃぐのをやめておとなしく鬼道さんの隣りに座って鬼道さんを見れば、やはり空を見ていて、私も空を見上げた。
ふと、思う。
この時間が愛しいと、ずっと続いてほしいと。

「鬼道さん、好きです」

私の小さな声は、チャイムの音で静かに消えた。
ノートを破って二人で作った紙飛行機は、私の手元から飛んでいって見えなくなった。
―――――
アンケより
稲妻との要望だったので鬼道さん。
短くてすみません。