コートまで行くと、女の子達がたくさん、本当にたくさんいて、私は少し戸惑った。
止まって、きょろきょろしていると向日くんが私の手を握って、引っ張った。
かあ、顔が赤くなる、恥ずかしい、よ。
女の子達の視線が痛い。

「む、かひく、」
「ん」
「大丈夫だから、」
「そうか」

手を離してくれた、ホッとしているとジローがコートの中入るか?と聞いてきたので、私は外でいいよ、と言った。
ジローはそっか、と言って、中に入っていった。
向日くんもじゃあな、と言って中に入っていった、私は、うん、と小さい声で返事して小さく手を振った。
向日くんはなんだか嬉しそうな顔をして、走っていった、私もなんだか嬉しくなった。
女の子達にまざって、みんなのテニスを見る、すごいなあ。
みんな上手だなあ。
そんなこと思ってたら、休憩になったみたいで、向日くんがタオルと水筒を持って笑顔で私のところまで走ってきた。

「見てたか?」

そう言われて、こくりと頷く、向日くんは満足そうに微笑んでそっか、と言った。

「や、っぱり、向日くんも、じ、ジローも、みんなみんなすごい」

吃りながらそう言うと向日くんがしかめっ面した。
私は何か悪いこと言っちゃったと思って、急いで謝る。
向日くんが何か言いたげな顔をした、私が首を傾げると跡部くんが練習再開だ、と言った。
向日くんは一回跡部くんの方を見て、おう、と返事したあと私にむかって次からは俺だけ見てろよな、と言って走って行った。
私は意味がわからなくて、ぽかんと口を開けたまま、こくりと頷いた。
向日くんは私が頷くのを確認するとニッと笑って忍足くんに行くぞ侑士!と言っていた。
元気だなあ、なんて思いながら、向日くんを見る、向日くんはキラキラ、輝いていた。
まだ、向日くんみたいにキラキラした人は苦手だけど、向日くんは、少し、気になる。
向日くんは、何が好きなんだろう、とか、向日くんはどんなことをいつもしてるんだろうとか、気になる。
これが、恋、だとは思わない、まだ、好き、とは思わないから、でもいつか、いつか、この感情が好きになる日は来るのかもしれない。
私は両手をあわせて、はあと息をかけた。
一瞬暖かくなって、すぐ冷たくなった。