謝ったのは、向日くんだった。

「なんか、俺が勝手に嫉妬して、八つ当りして」
「ううん、私、が悪く、て、ほんとは、私が謝らなきゃいけない、のに、ごめん、なさい…あの…別れないの?」

恐る恐るそう言うと向日くんは目を丸くして、口をぱくぱくさせた、声がでないみたいだ。
私が大丈夫か聞こうと思ったら向日くんは大きな声で言った。

「なんでだよ!」

びくっ、肩が跳ねた。
向日くんは続けてもしかして俺のこと嫌いになったか?不安そうな顔で聞いてきた。
ここで、勇気を出して言おう、苦手だ、とそうすれば他にいいとこなんてない私のことなんて向日くんすぐ嫌いになって、別れて、また前の生活に戻れる。

「嫌い、じゃないの、苦「そっか、よかったー」

苦手だ、と言う前に遮られてしまった、私は俯く。
向日くんはどうした、と私の顔を覗き込んできた、私は大丈夫と笑顔をつくる。
うまく、笑えてるかな。

「そっか」

ああ、言えなかった、苦手なのに。
本当のこと、言えなかった、このままじゃ、私だけじゃなくて、向日くんも傷ついてしまうのに。
ばか、私のばか。
今、言ってしまおう。

「向日くん」
「ん」
「あの、苦「二人ても酷いC」

ドアの方を見るとジローが眠そうな目をこすりながら立っていた、私は溜息をひとつ。
一人にしてごめんね、私が謝るとジローは満足そうに微笑んで、いいよ許してあげる、と言った。

「悪かったなジロー」
「うん」

あーあ、言えなかった。
ジローにまで遮られてしまった。
私ははあと溜息をついて二人を見た、二人はけたけた笑いながら話している、仲がいいんだなあ、私にはこんなに仲のいい友達、いないなあ。
羨ましいなあ。

「何笑ってるんだC」
「え」

私笑ってた?と聞けばああ、と向日くんとジローは頷いた。
私は両手で両頬を包む、恥ずかしいなあ、アホヅラだっただろうな。
そんなこと考えていたらチャイムがなった。

「あ、くそくそ鞄屋上だ」

向日くんが地団駄を踏んでいた、私も、おいてきちゃった。
取りに行くのか、ああ憂鬱だ。
そんなこと考えてたらジローが鞄を出した。
持ってきてくれたのかよ、さんきゅージローと向日くんが鞄を取ろうとしたらジローは鞄をす、とさげた。
そして言った。

「これ俺の、俺のしか持ってきてないよ」

向日くんはまじかよーと言って膝から崩れ落ちた。
大丈夫?と駆け寄ると向日くんは大丈夫だ、笑った。
そして私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「か、髪が…」
「わりわり、それより一緒に屋上行こうぜ」

そう言って向日くんがニッコリ笑うから、私は怒る気が失せてしまった。